美女の憂鬱 Vol.3

「絶対、私のことは好きにならないで」美女がひそかに願うワケとは

街を歩けば思わず振り返ってしまう。だけど目が合えば、逸らしてしまいたくなる。

誰もが羨望の眼差しを向ける、美しい人。…しかし、美女には美女にしかない悩みがあるのだ。

「人生の勝ち組」だと囁かれ続け、早29年の奈津子もそのひとり。

―誰も本当の私なんて知ろうともしない。

これは、そんな美女と美女に恋した二人の男の物語。

◆これまでのあらすじ

努力の甲斐あってついに営業成績トップになった奈津子。しかし、後輩に「顔が良いから」と言われショックを受けていた。そして2回目の映画会の日がやって来て…。


「山本さん、ですよね?お久しぶりです。…映画会、2人きりになっちゃいましたね」

仕事終わり、恵比寿の『チャイニーズダイニング方哉』へ向かうと、克弘はメニューをめくりながら奈津子を待っていた。奈津子に気付くと慌てて腰をあげ、ぎこちない笑顔で会釈する。

「お久しぶりです。まさかこんなにキャンセルが出るなんて」

もともと6人で開催されるはずだった今夜の映画会は、ひとり、またひとりとキャンセルの連絡が届き、昨夜にはついに幹事からも不参加の連絡が届いていた。

―あ、山本さんって…前回の映画会で、私のことチラチラ見てた人かも。

今日の映画会に来るまで“山本克弘”という名前にピンときていなかったが、あらためて克弘の顔を見て、ようやく思い出した。

小さな目とは対照的に、大きくて不格好な鼻梁。浅黒い肌には、まだ3月だというのに汗がにじんでいる。

「ま、まぁ。よくあるんですよね、ドタキャンも映画会の文化のひとつなので…」

相変わらず個性的な顔だな…と思いながら、ぼんやり克弘の顔を眺めていると、所在なさげにおしぼりを丸めていた克洋が、照れたようにつぶやいた。

「そうなんですね。自由な空気感、私は好きです」

奈津子はにっこり微笑みながらそう言ったが、そのことをすぐ後悔することになる。

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