14日間の恋人 Vol.4

「女とすぐに深い関係になるような男は、所詮こんな人か…」彼女が失望した、男の一面とは

ひとり旅をするとき、こんな妄想をしたことはないだろうか。

―列車で、飛行機で、もし隣の席にイケメンor美女が座ったら…?

そして、妄想は稀に現実になる。

いくつになっても忘れないでほしい。運命の相手とは、思わぬところで出会ってしまうものなのだと。

傷心旅行に発った及川静香は、素性の知らない男と恋に落ちるが…。出会いから、別れまで、たった14日間の恋の物語。

◆これまでのあらすじ

静香は元カレに別れを告げられ、二人で行く予定だったハワイへ、ひとり旅に来る。

2日目にして男女の仲になった勇作。一度は別れたはずが3日目に再会し、運命を感じるが、彼は連絡先すら交換せずに立ち去ってしまい…。


Day4, 2019年6月11日


12時15分、『マウイ・ブリューイング・カンパニー・ワイキキ』。

建物の2階にある広大なブリュワリー&レストランには、爽やかな風が吹き抜け、陽光と日陰のコントラストが映えている。

ふと見渡せば、ハンバーガーに興じる家族連れ、テレビ電話で大声で会話する人、友人らしき店員と楽し気に話す地元の人…。

ハッピーなオーラが賑わう店内で、静香はバーカウンターに肘をついて座り、大きく溜息をついた。

目の前には、飲み比べできる地ビールの小さなグラスが5つ。昼からアルコールをあおるなんて行動は、東京ではほとんどしない。

無意識に時計を見る。勇作の姿を最後に見てから、22時間50分が経っていた。即座に分単位で時間を計算してしまった自分に、ハッとした。

―22時間50分って…。うわっ、私、細かっ…。

自己嫌悪に陥って、ふたたび溜息をつく。

元カレ・健次と付き合っていた頃、よく「君は本当に細かい性格だ」と言われていた。ハワイに来て“行動”は変わっても、“性格”は変えられない。

かつての健次は「君は細かい」と言った後は決まって「でも、そういう真面目なところが好きだよ」と続けてくれた。

それなのに別れるときには、「真面目でつまらないから」と言い放った。

―もう忘れよう。健次のことも、そして勇作のことも。

2日目の夜、勇作は「元カレを忘れたいなら、俺を利用すればいい」と囁き、静香はその言葉に甘えた。結果、その思惑どおりになったではないか。勇作に感謝しよう。

地ビールのグラス5杯をすべて飲み終えた静香は、店員に会計を頼む。

レセプションカウンターの前を通って、階段をおりて店外に出ようとしたその時だった。

カウンターの脇に、地元ミュージシャンのライブ告知のフライヤーなどに交じって、一枚のフライヤーが目に入った。なぜならそこには、見覚えのある顔写真が載っていたからだ。

すぐに手に取り、顔写真をまじまじと見つめる。いつものクシャッとした顔で、勇作が笑っていた。

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