
女神のオキテ:女だらけの世界は、天国か地獄か? 25歳の女が初日に言われた、衝撃の文句
その日は、彩乃の同期全員が入るLINEグループの通知がひっきりなしに鳴っていた。
内示の段階であり、他人へ報告することは社内規定上禁止されている。だがそんなのはお構いなしというように、各々が人事異動に関しての報告をしあっていた。
『京都から仙台への支社間移動だったよ…。まだ営業続けないといけないなんて…。マーケティング部門に行きたかった〜』
『私は人事部門だった。4月から本社だけど、1回も希望出したことないのに。人事は何を見てるんだ。(笑)』
同期40人のうち、彩乃と同じく、本社の商品開発部門へと異動が決まったのは、たったの8人であった。
口々に配属先を嘆く同期たちのLINEを見ていると、彩乃の胸のうちにふつふつと、ある思いがこみ上げてくる。
ー私は、みんなが行きたかった部門に同期の中でも最短で行けるんだ…!
彩乃は、意気揚々とLINEのメッセージを打ち込んだ。
『みんな、久しぶり。私は商品開発に異動になった!20代~30代がターゲットのブランドの担当だよ』
すると一呼吸おいて、同期たちが一斉に返信を送ってくる。
『え?彩乃、商品開発!?羨ましい。しかもあのブランドなんだ…いいなぁ』
大半が好意的な反応を見せた。ところが、ある人物だけは違っていた。
『でもさぁ、営業と違って本社の商品開発なんてほぼほぼ女性しかいなくて、大変そうだね。お局とかいそう…』
それは、同期の中でも特に「本社」にこだわっていたにも関わらず、今回異動を言い渡されなかった美沙である。
そして美沙の一言を皮切りに、一気に風向きが変わったのだ。
『私もそう思った~!実際、先輩から話を聞いてるけれど、The女社会って感じで怖そうだよ』
そう言ってきたのは、美沙と仲がいい別の同期だ。彼女もまた、マーケティング部門を希望したものの、全く違う部門への異動が決まったらしい。
『え?例えばどんな?』
不安を感じて、思わず聞き返す。
『去年異動されていった先輩だから、そろそろ1年が経つ頃なんだけれどね、チームの人たちに化粧を誉められたんだって、でもその誉められ方が…』
彩乃は息をのんで、言葉の続きを待つ。同期が語るエピソードは、こんな内容であった。
1年前にその先輩が異動してきた頃、先輩はなんとチームの皆から「ほんとに化粧が下手だね」と影で言われていたらしい。そして先日、「でも1年で見違える程に上手くなったから、よかったわね」と褒められたというのだ。
『そうなんだ、それは怖いなぁ…』
複雑な気分になってそう返しながら、ふと、同じくLINEで新しい別のグループに招待されていることに気付いた。
グループ名は「商品開発@2017年入社組」。今回、開発部門へと異動する8人の同期メンバーが参加している。
『あの二人、絶対に自分の希望部署に行けなかったからって嫉妬だよね、あれは』
『ほんと。なんで私たちの不安を煽るようなことピンポイントで言っちゃうんだろ。その姿が残念だってわからないのかな』
同期の全体ラインでいきなり攻撃されたことで、ここではメンバーの怒りの感情が吐露されていく。と同時に、これからの不安も共有された。
『でも、確かにいよいよ本社勤務なのは嬉しいけれど、女の世界だっていうのは正しいと思うし、覚悟しなきゃだよね』
さっき聞いたエピソードが事実だったらと思うと、彩乃も気が気ではなかった。
確かに本社は支店とは空気もガラリと変わるだろうし、女性ばかりの職場は何かと厄介なことが多いというのは、世間一般でよく言われていることである。
ーTHE女社会か…。私やっていける?ううん、入社以来の夢が叶うんだから、最初から弱音を吐いてちゃダメだ。
彩乃はあらためて喝を入れると、「4月からは同じビルで働くから、何かあったら報告しあって助け合おう」と同期と誓い合ったのだった。
この記事へのコメント
随分余裕がある開発だなー。いくらフレックスだからって。お話にしても、ドリーム成分強すぎかな。
爽やか系の話がたまには読みたい。