大人になるほど、シンプルで良いものに心が動くもの!澄んだスープに旨みが凝縮したあっさりラーメンはその象徴だ。
今回は究極ともいえる一杯が味わえる名店13店を一挙に紹介しよう。
超人気ラーメン店『銀座 八五』
ホテルの総料理長、フレンチシェフとして腕を振るっていた松村康史氏が、誰もが気軽に食べる事ができる料理を提供したいと考え、自身も大好きだったラーメン店を開業したのが、2015年のこと。
水道橋にある『中華そば 勝本』からスタートし、『つけそば 神田 勝本』も開業。オープンの度に話題となり、どちらも行列のできる人気店として不動の地位を獲得している。
そして2018年12月に『銀座 八五』をオープン。松村氏の憧れの地であった、銀座という場所でのオープンとあって、その意気込みは供される一杯の端々から伝わってくる。
まずはスープ。ベースとなっているのは、名古屋コーチン、鴨のガラ、もも肉、手羽先など、その時期によってベストなものを選び抜き使用している。
そこに、国産昆布、イタリア産ドライトマト、イタヤガイ、干しシイタケ、九条ネギ、生姜を加え水から仕上げていく。
この全ての具材から旨みが抽出されたスープにイタリアパルマ産のプロシュートを投入。この生ハムがこのスープの最大の特徴。生ハムから抽出する塩味と旨みが、スープに豊かな味わいをプラスしているのだ。
名古屋コーチンや鴨から抽出する鶏油と丼の中で合わさると、透き通った琥珀色をたたえた美しいスープとなる。
口に運ぶと、すっと口の中に旨みとコクが広がっていき、最後の一滴まで飲み干したくなる美味しさ。実際、ほぼ全ての人がスープまで飲み干して帰っていくという。
他にはない味わいのスープに感動した後は、麺に注目。
ラーメン店を始めた当初から付き合いのある『浅草開化楼』と相談し、このスープに合う麺を追求。辿り着いたのがこの細ストレート麺だった。
デュラム小麦などを独自に配合して作られるしなやかな麺は、口の中にスープと一体となってするりと運ばれていく。
すする度に、計算しつくされた極上の食感と味わいを堪能して欲しい。
松村氏は、ラーメン一杯を料理のコースの様に考えているという。
オードブル、スープ、メインディッシュと続くコース料理を、ラーメン一杯で再現できるよう、具材ひとつひとつにも手間を惜しまない。
「叉焼」は厳選した国産豚バラ肉をタレと共にパックに入れ真空状態で蒸しあげ、しっかりと火入れを施していながらも柔らかくジューシー。
最後に野生の黒胡椒(ペッパーキャビア)の深い芳香と辛味を重ね、ラーメンにさらなる奥行きを与えるのだ。
割った瞬間にとろりと溢れる黄身の演出も重要と考え、敢えて割らずにのる「味玉」もいい仕事ぶりだ。
ドライトマト、干しシイタケなどの乾物から旨みを抽出したエキスで味付けを施しており、一切スープの味わいを邪魔することがない。
ノスタルジックなビジュアルを目指し、スープ、麺はもちろん、具材ひとつひとつにこだわり抜いて辿り着いた『銀座 八五』の「中華そば」。
さらなる展開にも期待したい『銀座 八五』は、並ぶ価値大アリの名店だ!
究極にシンプルで美しい中華そばの名店『柴崎亭』
『柴崎亭』とは、2011年に調布市柴崎に開業(現在、一号店はつつじヶ丘に移転)して以来、多くのファンを獲得し続けるラーメンの名店である。
そんな人気店の2号店が『柴崎亭 梅ヶ丘店』だ。
同店のラーメンを求めてオープン前から並ぶ人もいるほど、人を魅了し続ける『柴崎亭』。その魅力を余すところなくお伝えしよう。
まず同店を訪れた人々が魅了されるのは、提供される全てのラーメンが放つ、輝く程の“美しさ”だろう。
素材本来の味を活かし、化学調味料を一切使用せずに作られる鰹出汁をベースとしたスープに、秘伝のかえしを加えて作り上げる透き通ったスープは、最後の一滴まで飲み干したくなるほど絶品。
田村製麺所から特注で仕入れる低加水麺は、すする度に小気味よい歯応えとともに、良く絡んだスープの美味しさを運んでくれる。
『柴崎亭』の基本の味わいとも言える「中華そば」や、純度の高い鶏油で仕上げる「鶏塩そば」など余計なことは一切しない“究極の引き算”により生み出される一杯は、味わうほどにラーメンの美味しさを改めて教えてくれるのだ。
行列ができるほどの人気店でありながらも、通ってくれるファンのために常に新しいラーメンの味を探究しつづける『柴崎亭』。これからもラーメン界に、次々と新たな感動を届けてくれる名店であり続けるだろう。
丸鶏の旨みをすべて受け止めた、究極のまろやかスープ
『麺亭 しま田』
2019年5月、恵比寿にオープンした『麺亭 しま田』は、そんな大人が食べたい一杯を提供してくれる希少な存在だ。
店に入るなり、ふわりと漂う香りの正体は鶏。
店主が理想の味を極めるために、数ヵ月ラーメンを食べ歩き、行き着いたのが「毎日でも食べられるラーメン」。
その理想をストイックに追求して生まれたのが、大山鶏の丸鶏を10羽煮込んで作り上げるスープだ。昨今の主流である動物性の出汁は加えずに、鶏出汁のみ。
鍋に大山鶏を丸ごと10羽投入し、鶏の香りが飛ばないよう沸騰する手前の99℃をキープ。甘みをより引き出すため鶏ガラも加えて、こまめにアクを取りながら約6時間煮込んでいく。
店主がスープに絶対の自信を持っているから、卓上にコショウやニンニクなどの“味変アイテム”は一切置かない。
そんな極上のスープに、醬油ダレを合わせて仕上げるため、一切雑味がなく〝鶏の甘みと香り〞が凝縮されている。
最もシンプルな「らぁ麺」800円は全粒粉の細麺と、しっとり感が強いチャーシューが楽しめる。
上質で透き通ったスープは近年ラーメン界で主流の淡麗系。恵比寿に新風を吹き込んだ注目の新店は、早くも街の人々の心を掴んでいる。