2020.01.06
ピンクが好きってダメですか? Vol.16年制の薬学部出身の桜は、入社3年目の27歳。
小さな頃から勉強熱心で大学でも優秀な成績を収めた桜は、物心ついたころから“リケジョ”としての毎日を過ごしてきた結果、晴れて憧れの化粧品ブランドへ入社したのだった。
「桜さんは、本当に努力家ですもんね」
「そんなそんな、私は不器用なので人一倍頑張らないと結果が残せなくて。でも、たしかに昔からものすごく負けず嫌いだったかも。小学生の頃からテストで100点が取れないと、泣きながら勉強するタイプでした。変わり者ですよね」
桜の言葉をノートパソコンに打ち込んでいく編集の岡田千里と、ちょっとした表情の変化も見逃さずにシャッターを押すカメラマン。
舞台は夕方のレストランのオープンテラス。通りすがりの人たちの眼差しにはなかなか慣れないけれど、こうした取材を通して自分の思いを言葉にすることに、この頃はやっと楽しさを感じるようになってきた部分もある。
「桜さん、こっち本業の方が良いんじゃないですか?」
冷やかすようにいうのは、代理店でこの企画を担当している新山太一だ。編集の千里も、同行しているカメラマンも太一に賛同するように大きく頷いた。
「やめてくださいよ。私はあくまでも、いち研究員ですから」
桜が照れながらも真顔を装うと、その愛らしさに空気が和んだ。その様子を見て、千里はインタビューの質問を続ける。
「では、今日は桜さんおすすめの美容に良いデザートをご紹介していただけるとのことですが」
「はい。ここのレストランの限定デザートなんですが…」
―すべては自社商品のプロモーションのため。
桜はそう割り切って顔出しの取材に応じてきた。一人でも多くの肌に悩みを抱える女性に届きますようにと、いつでも祈るような気持ちだった。
取材が終わった夜。桜と太一、そして千里の三人は、軽い打ち上げと称して近くのスペインバルへ来ていた。桜は「すみません」と店員を呼び止めると、ノンアルコールドリンクを注文する。
その様子をみとめた太一が、軽い口調で桜に尋ねた。
「あれ?桜さんお酒は?」
「平日はいただかないようにしているんです。楽しくなって飲みすぎると翌日辛いので」
桜は、二人に交互に笑顔を向けながら話す。
「じゃあ、桜さんをデートに誘っても酔っ払ってる姿は見られないってわけね。男性陣は口説き落とすの、苦戦しますね」
千里が、わざとおどけるように言った。
「お誘いなんて、全然ないんですよ」
「またまた」
桜が頰を赤らめて謙遜すると、太一が深く頷く。
「たしかに誘いづらいです。だって、桜さん、“私7時間は寝ないといけないんです”って怖い顔して9時に帰っちゃうんですよ」
「太一さん、ひどい。怖い顔なんてしてないですよ。いくらなんでも9時には帰りません。12時前には寝なきゃいけないので…9時半には帰ってるかもしれないですけど」
桜がそう言うと、太一と千里は、9時も9時半も変わらないと言って笑った。そして、いつの間にかほろ酔いになっていた千里が、いつもの調子で桜のことを褒め始めるのだった。
「そのキャラでも許されるのが桜さんですよね。私も見習いたいです、その女子力。いつもお肌も髪もツヤツヤで、メイクもしっかりして、女の子らしい格好で、それでいて研究の現場の最前線で活躍しているんですよ。同じ女として、お手上げです。そりゃ、もてますよね」
桜は「そんな、褒めすぎですよ」と謙遜しながら千里の言葉を交わす。もちろん、千里に他意はない。少し年下である桜のことを尊敬してくれた上で、いつでも「かわいい」「素敵」と本心から褒め讃えてくれるのだ。
だが桜は、そんな千里の褒め言葉を素直に嬉しいと感じる一方で、違った感情も抱いていた。
「というわけで、9時半なので、私はお先に失礼しますね」
桜は丁寧に二人に挨拶をすると、一足先に店を出る。
桜が千里の褒め言葉に感じる、もう一つの感情。それは、いつもチクリとした違和感だったのだ。
【ピンクが好きってダメですか?】の記事一覧
2020.03.23
Vol.13
「バラしてください…私の秘密」隠し続けてきた過去を、ついに公表した女の結末
2020.03.22
Vol.12
可愛すぎる女と、男勝りな女。不器用なバリキャリ女達の結末は?「ピンクが好きってダメですか?」全話総集編
2020.03.16
Vol.11
「まさか…クビ?」上司の忠告を無視した研究員を、待ち受けていた驚きの待遇
2020.03.09
Vol.10
終わりを告げる三角関係。その時、2人の女の間で交わされた会話とは
2020.03.02
Vol.9
南国で過ごす夜に、大胆になった女。三角関係の場で思わず言ってしまった一言
2020.02.24
Vol.8
「職場で孤立してるなら…」パワハラに悩む女に持ちかけられた、意外すぎる提案
2020.02.17
Vol.7
「かわいいからって許されると思ってる?」婚活の場で始まる女の戦い
2020.02.10
Vol.6
女の敵は、女。突如呼び出された人事部で突きつけられた、理不尽な宣告とは
2020.02.03
Vol.5
婚活サイトで会った相手に、一瞬でNGをつきつけられた美女の本心は
2020.01.27
Vol.4
「そろそろ孫を見せて」彼氏いない歴=年齢の女性が、過干渉の母に言われた一言
おすすめ記事
2016.10.11
慶應内格差
慶應内格差:エリート街道を歩むメガバンカー、どんなに背伸びしても所詮外部生?!
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2021.08.12
ドクターKの憂鬱
「信じてもらえてなかったなんて…」42歳の女をどん底に突き落とした、8歳下のパートナーの発言
2020.07.30
それでも、私は東京で消耗する
それでも、私は東京で消耗する:年収1,000万の慶應卒女が、都心暮らしに拘る理由
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
2017.07.26
港区内格差
今日、港区から去る者がいる。元港区民が哀れまれずに済む引っ越し先とは?
2018.07.03
年の差婚コンフィデンシャル
年の差婚コンフィデンシャル:「夫を、愛してはいませんでした」美しい未亡人が語る22歳年の差婚の真実
2020.01.26
天秤女~恋は同時進行で~
「いい加減、他の男とは別れろよ」。相性バツグンの男から、女が決断を迫られた夜
2024.02.13
今日、私たちはあの街で
今日、私たちはあの街で:バレンタイン当日、彼と音信不通に。翌日に驚愕のLINEが届き…
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
この記事へのコメント