昭和。女性が、”男性を支える”立場だった時代。
平成。女性が、“男性のように”活躍することが求められた時代。
そして新時代、令和――
女性が、”女性として”輝ける時代は、きっとすぐそこだ。
ピンク。プリンセス。キラキラしたアクセサリー。ふわふわのスイーツ。
子供のころから変わらない、大好きなものに囲まれて生きていたい。
それなのに…社会の最前線で男性と肩を並べて働く私は、女を捨てて男のようにふるまわないといけないの?
私、ピンクが好きってダメですか?
化粧品会社で開発を担当する笹本桜(27)は、薬学部を首席で卒業したエリート。会社でも一目置かれる彼女は、仕事ぶりからは想像もつかないガーリーで可愛らしいものが好き。
そんな桜は、男勝りな同級生、石川夏希(27)と再会して…
「桜さん、マスク取ってください。それと、前髪とサイドの毛、帽子から出せます?」
研究室で白衣姿で撮影に臨む笹本桜に、カメラマンや編集者からそんなリクエストが投げかけられる。
桜は、すみません、とカメラに向かって目配せをして、小さく首を横に振りながら申し訳なさそうに答えた。
「ごめんなさい。研究室の中では、衛生的にしなくちゃいけないので…」
<化粧品会社の美人研究員が教えたい♡キレイの秘密>。そんな企画名を掲げた女性誌の撮影とインタビューでは、こうしてファッションモデル然とした振る舞いが求められることも少なくない。
確かに、モデルの撮影であれば見栄えが何よりも大切なのかもしれない。しかし桜はあくまでも、化粧品開発の研究員なのだ。
ルックスのかわいらしさが注目を浴び、こうして会社の広報活動に協力することの多い桜だったが、桜自身は“研究員”というスタンスを崩したことはなかった。
不満げなカメラマンに向かって、桜は言葉を続ける。
「その代わり、アフターファイブの撮影はとびきりおしゃれするつもりです!」
桜の申し訳なさそうな視線を受けて、馴染みの女性編集者はようやくガラス戸の向こうからOKのサインを出した。
化粧品の開発研究。ここは、華やかな化粧品業界の裏側であり、核の部分だ。
桜はこの仕事を心から愛し、そしてプライドを持っている。
天職に出会ったという自信と喜びはいつでも桜のモチベーションとなり、その思いは実績へとつながっていた。
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