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  • 落ちない男 Vol.4

    「ついに彼から誘われた!」フラれ続けた女が、意中の男を射止めた意外な方法


    「愛理…ちゃん?」

    待ち合わせ時刻ちょうどにやってきた湊は、愛理の姿を認め、目を丸くしながら近づいてきた。

    「驚いたな。雰囲気変わったね。一瞬、誰だかわからなかったよ」

    そんな風に声をかけられ、愛理はなんだか恥ずかしくなってしまう。

    これまでのように武装していないからだろうか。なんだか心まで見透かされたような気持ちになり、愛理は「…変、かな?」と照れながら呟くことしかできなかった。

    しかし湊の様子はというと、どこかいつもより饒舌で、愛理に対し興味を持ってくれているように見える。

    その証拠に、彼は着席すると、目の前に座る愛理をまっすぐに見つめ、こう言ってくれたのだ。

    「その方がずっといいよ。すごく似合ってる」

    これまでとは明らかに違う、優しい声。熱のこもった眼差し。

    二人の間に温かな空気が流れるのを感じて、愛理はどこかホッとするような、心がほどけていくような気持ちに包まれた。

    「いい気分だし、昼だけどシャンパン飲んじゃう?」

    テンション高めに尋ねた湊に返す笑顔も、いつもの作り上げられた表情とは違う。心から楽しい気持ちが溢れ出すように、自然に笑顔が出てきたのだ。


    「今日、勇気だして誘ってみて良かった」

    湊と、少しずつ心が近づいている。和やかな時間をともに過ごすうち、そう確信した愛理は、無性に素直な気持ちを伝えたくなって、つい本音を口にした。

    突然の言葉に、湊は「ん?」とピンときていない表情を見せる。

    湊のその顔を見て、愛理は急に恥ずかしさがこみ上げてきて、慌てて言葉を付け足す。

    「あ、なんか急に変なこと言っちゃって…、ごめんなさい。気にしないで!」

    愛理のこれまでの必勝パターンは、常に自分を優位に置くこと。ゲーム感覚の駆け引きで恋愛を楽しみ、男性を虜にしてきた。

    しかしこれまでに培った成功体験は湊に全く通じないし、何よりも今、この瞬間、愛理はただ彼の前で、素直な自分でいたいと、心から思ったのだ。

    「この前、湊さん『愛理ちゃんは自分の良さに気づいてない』って言ってたでしょ。実は同じようなことを優香からも言われたの。それがどういうことか、あの時はピンとこなかったけど…今は少し、その意味がわかる気がする」

    心の中にある感情を、湊に届けたい。一生懸命に言葉を紡ぐ愛理を、湊は黙ったまま、穏やかな瞳で見つめている。

    彼が何を考えているのか、自分のことをどう思っているのか。その表情から読み取ることはできなかったが、しばしの沈黙の後、湊は愛理にこんな言葉をかけてくれたのだった。

    「なんか今日の愛理ちゃん、これまでと別人みたい。見た目の話もそうだけど、それだけじゃなくて…なんだか自然体で、話しててすごく楽しいよ。

    正直なところ、これまでは愛理ちゃんの言ってることってどこまでが本心なのかなって思うようなところがあって。掴みどころがないって言うか。でも今日は、僕もリラックスして話せる気がする」

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