『KEISUKE MATSUSHIMA』でのランチを終え、湊に続いて店を出た時、愛理の心は幸福感でいっぱいだった。
初めて心が通った、という実感がある。これまでは常にポーカーフェイスだった湊が、今日はとてもよく笑っていたのだ。さらに。
「本当は、このままデートできたらいいんだけど」
明治通りまでの道をともに歩きながら、湊が寂しそうに呟いた。
「どうしても今日中に片付けなきゃならない仕事が残ってて…ごめん」
残念だ、と言って謝る湊に、愛理は慌てて首を振った。
「そんな、気にしないで。むしろ忙しいのに時間作ってくれてありがとう」
通りにたどり着き、立ち止まる二人。なんとなく名残惜しくて、お互いにすぐタクシーを拾おうとしない。
すると次の瞬間、なんと湊の方から思いがけない言葉が飛び出したのだ。
「よかったら…今度は二人で遠出でもしない?」
「えっ…」
予想もしていなかった言葉に、愛理はしばし放心状態で言葉を失う。
−まさか。まさか、湊さんからデートに誘ってくれるなんて…!
「う、うん!行きたい!」
慌てて返事をしたら、なんだかものすごく前のめりになってしまった。けれどそんな自分が不思議と、心地よい。
「じゃあ…スケジュール見て、後で日程候補のLINEするね」
はしゃぐ愛理を嬉しそうに見つめ、湊は通りを走るタクシーに手を挙げた。
◆
湊と別れたあと、愛理はお気に入りのセレクトショップに立ち寄り、気取りすぎない、カジュアルな洋服をいくつか買い足した。
もちろん、次の湊とのデートに着ていくためだ。
自宅に戻った後も、愛理の興奮は冷めやらない。これから始まる恋の予感で、まるで10代の頃のように胸が踊る。
その日の夜、愛理は美肌のためにも早寝をしようと早々に入浴を済ませ、毎日の日課である『DHCオリーブバージンオイル』を丁寧に肌になじませた。
手のひらでオイルをぎゅっと肌に密着させると、美容成分がぐんぐん中に入り込んでいくのがわかり気持ちがいい。
すると不意に、ベッド脇に置いたスマホからLINEの着信音がした。
急いで駆け寄ると、思った通り、湊からだ。
“近い日程だけど、来週の日曜はどう?”
“愛理ちゃんと、またすぐに会いたくて”
メッセージを読んだ愛理は、思わずその場で「きゃー!」と叫び、すぐさま指先を動かした。
“もちろん空けます!”
“私も、早く会いたい”
Fin.
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