200億の女 Vol.19

「借金の理由は…」夫の隠された過去が明かされた時、妻が言った意外な言葉

騙されたのは女か、それとも男か?
「恋」に落ちたのか、それとも「罠」にはまったのか?

資産200億の“恋を知らない資産家の令嬢”と、それまでに10億を奪いながらも“一度も訴えられたことがない、詐欺師の男”。

そんな二人が出会い、動き出した運命の歯車。

◆これまでのあらすじ

詐欺師の策略に気づかぬうちに嵌っていく智は、ついに夫との離婚を宣言してしまう。その頃警察の再捜査も始まり…詐欺師の味方のはずだった田川弁護士はまさかの密告ををする!?


誰か、他の男に…智の気持ちが揺らいでいるんじゃないか、って…

そう言った夫、大輝の言葉に、私の心臓が、ドクン、とはねた。

『ご主人に会った時に…思わず、言っちゃったんです。あなたの奥さんのことが好きだと』

小川さんの言葉が脳裏に蘇ってしまった、自分の胸の焦りを打ち消そうとした時、私を見る大輝の目は薄暗く曇り、以前、富田もそんな目をしていたことを思いだしてしまった。

「…智、あの男に好きだ、って言われて、どう感じた?」

あの男、が、小川さんを指すことは、聞かずともわかる。きっと父が今日の社長室での小川さんの発言を大輝に話したのだろうが、私は、大輝と小川さんの間に何があって、どんな話をしたのかを問い詰める気にはならなかった。

「…どうも感じないわ。小川さんは良い人だけど、あの人は誰にでもそういうことを言う人だし…確かに好きだとは、言われたけれど、本気で受け止めたりしてない」

なぜか言い訳のような口調になった私を、大輝は少しジッと見つめてから、薄く笑った。今まで見たことがない笑い方。知らない人を見ているようだった。

「智さ、自分でわかってる?智は、自分で思ってるよりもずっと、嘘が下手だよ。あ、でももしかしたら、俺だから、わかるのかな。智をずっと見てきた俺だから」

戸惑う私を気にせず、大輝は言葉を止めない。

「俺が悪いのは分かってる。智のこと騙してた俺が、色々言う権利がないことも。あの日、智に時間が欲しいと言われてから、智が望むなら、離婚するべきなんだろうな、って思ってたのも本当だよ。

でも…あの男が現れた。あの男のとこに智が行く、っていうなら…奪われるのは我慢ならないし許さない」

「…奪われるって…私は彼のところに行ったりしないし、彼は関係ない。本当に関係ないわ」

必死に伝えているつもりなのに、一向に伝わっている気配がないどころか、大輝は、諦めたように、まあ、いいや、と、また、薄く笑って続けた。

「俺が、どうしてお父さんと近づいたのか、話してもいい?」

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