女たちの選択~その後の人生~ Vol.11

結婚してくれない彼と付き合い続けて10年。34歳で諦めかけた女に訪れた、思いがけぬ展開とは

「彼、真一郎との出会いは11年前。まだ会社に入ったばかりの頃、同期に誘われて男女数人でスノボに行ったんです。夏はキャンプ・冬はスノボ、しばらくはグループで仲良くしていたのですが、そのうち二人で会うようになって」

大手不動産デベロッパーに勤める真一郎は、当初から、ぐいぐい来るような肉食系の男ではなかった。

穏やかで優しく、誰とでもうまく付き合える性格が長所である反面、強い意志がなく、優柔不断な一面が最初からあったという。

ただ琴美自身、代々続く金属部品の製造業を営む家庭に生まれ、小学校からカトリック系の女子校育ちで、争いや競争と無縁の人生を送ってきた。そのためぐいぐい自分を押し通したり、野心を丸出しにするような男性が苦手だった。

その点、真一郎は大学教授の父親を持つ良家で育っている。少々煮えきらないところがあっても、彼と過ごす時間は平和で、穏やかで、琴美を安心させてくれるのだった。

「ただ、付き合うまでも大変だったんです。何度もデートしているのに、一向に付き合おうと言ってくれなくて。当時はまだ若かったこともあって、友達も巻き込んで彼をせっついてもらったりして、ようやく付き合うことになったのが24歳の時でした」

付き合い始めた当初、まだ若かった二人は、ピロートークで「いつか結婚したいね」なんて話すこともあった。

しかしそれはお互いに戯言のようなもので、重さも現実感もないからこそ言えた言葉だ。その証拠に、年齢を重ねた今となっては、真一郎はたとえ冗談でも「結婚」の「け」の字も口にしないという。

「私はお酒が飲めないし、真一郎も飲み歩くようなタイプじゃないから、特に何の問題も起きず、無風状態のまま月日だけが経ったというか…。気づいたらお互いアラサーになっていた、という感じでした。ただ、この頃から少し、私と真一郎の関係性が変わったんですよね」

初めての浮気疑惑


何かがおかしい。

琴美がそう感じたのは、付き合って5年、29歳の時だったという。

「これは女の勘としか言いようがないのですが、誰か近しい女性が他にいるな…という感じがしたんです。電話に出ないことが増えたり、週末の予定を濁してきたりするのも怪しかった」

「正直、驚きました」と、琴美は目を丸くして、当時の話を続ける。

「真一郎ってサービス精神があるタイプじゃないし、女性の扱いに慣れてる訳でもない。浮気の心配なんてこれまでしたことなかったから。

でも冷静に、客観的に考えれば、29歳・高学歴、大手デベロッパー勤務、育ちも良くて優しい…彼、ものすごい結婚向きの男なんですよね。目ざとい女に狙われても不思議じゃない。その時ようやく、私も焦ったんです」

24歳から29歳まで。女の一番良い時期を5年も捧げた彼氏を、奪われるわけにいかない。

これまでに感じたことのない焦燥と衝動に突き動かされ、琴美はなんと、それまで住んでいた浅草の実家を出ることを決意したらしい。

「一緒に暮らしたいと言ったら、彼、意外にもあっさりいいよって。もともと流されやすい性格というのもあるし、ちょうどマンションの更新時期と被っていたこと、さらには私も家賃を折半すると申し出たから。広い家に今より安い額で住めて、家事も任せられる。彼にとっては正直、悪くない話だったはずです」

とはいえもちろん、琴美の両親は反対した。一緒に住むのは結婚してからにしなさい、と何度も説得された。

しかし琴美は「大丈夫」「彼も結婚を考えてくれているはず」の一点張りで強行突破。

30歳を前に、真一郎とともに目黒でマンションを借り、一緒に住み始めたのだった。

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