女たちの選択~その後の人生~ Vol.6

「無理やり離婚して欲しくない」29歳の自立した女性が、結婚せず“愛”に走る理由

友里恵の彼・西畑はかつて同じ外資系投資銀行に勤めていたという。

彼女が新卒で入社したとき、12歳年上の西畑は既に業界の有名人。知らぬ者はいないほどのやり手で、まさに“雲の上の人”のような存在だった。

「社会人になりたての私に、彼はとても輝いて見えました。当時はまだ西畑も30半ば。長身に、鍛え上げられた精悍な体つき。顔立ちも甘くて…憧れていたのは私だけじゃなかったと思いますよ」

懐かしい過去を思い出したのだろうか。友里恵はどこか遠い目で、小さく笑った。

その横顔には、見る者をハッとさせる色気が宿る。友里恵は顔立ちの整った美人だが、華があるというより、どこか憂いを帯びた印象を受ける女だ。

「彼と仕事で絡むようなことはありませんでしたが、先輩に誘われてついていった食事の席で話す機会があったんです」

当時、彼女には学生時代から続く同い年の彼氏がいたという。

「でも私は外資金融、彼はテレビ局勤務…とお互いにかなりのハードワーク。それにまったく異なる世界に身を置いていたので、次第に心は離れていきました」

西畑との出会いは、そんな友里恵の心の隙間にすっと入り込んだのだ。

「初対面から、西畑も私を気に入った様子で。私のことを自分の隣から離そうとしなかったし、すぐに連絡先を聞かれて…その後、二人でちょくちょく誘われるようになったんです」

友里恵は、西畑が既に結婚していることを知っていた。さらには当時、彼の妻が妊娠中であったことも。

「確かに私も最初から西畑に好意を持っていました。でもそれは尊敬できる先輩に対する憧れというか…少なくとも、私はそう思っていました。だから、彼に奥さんがいると知りつつも躊躇なく誘いに応じていたんです」

しかし至極当然の流れだが、少しずつ距離を縮めた二人の関係は、次第に男女の関係へと変わっていった。

「二人で会うようになって半年が経つ頃だったかな…西畑が会社を辞めることになったんです。知人が設立した投資ファンドを手伝うとかで。その送別会があった夜、皆と別れた後に二人だけでホテルのバーに移動したんです」

そしてその夜、ついに二人は一線を超えてしまったという。

「バカな女だって思いますか?だけど…私、彼とそういう関係になって、気がついてしまったの。彼と私は出会うのが遅すぎた。彼こそが、私の運命の人だったのに…って」

不倫する女の、典型的な言い訳に聞こえなくもない。

だが彼女の表情は真剣そのもの。そのまっすぐで力強い瞳は、揺らぐことのない決意のようなものさえ感じさせるのだった。

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