200億の女 Vol.6

「こんな女性は初めてだ…」。女を手玉に取り続けてきた男を驚かせた、お嬢様の魅力

騙されたのは女か、それとも男か?
「恋」に落ちたのか、それとも「罠」にはまったのか?

資産200億の“恋を知らない資産家の令嬢”と、それまでに10億を奪いながらも“一度も訴えられたことがない、詐欺師の男”。

そんな二人が出会い、動き出した運命の歯車。

200億を賭けて、男と女の欲望がむき出しになるマネーゲームはやがて、日本有数の大企業を揺るがす、大スキャンダルへと発展していく。

男が最初の駒に選んだのは、令嬢の部下だった。そしてその男の計画通り…令嬢はジワジワと追い詰められているように見えたが…


ドクン、ドクン、ドクン。

耳に直接流れ込んでくる、男の心臓の音。それは一切乱れず、穏やかで規則正しい。

そのことに気がついた時、私は我に返り自分でも驚くほど大きな声を出してしまった。

「離してください」

その勢いのまま小川親太郎の胸を押し返すと、あっさりと解き放たれた。

まるで私が望んでそこにいたかのように…。そんな気まずさで居たたまれなくなるが、ともかく場の主導権を取り戻さなければならない。

穏やかに微笑む美しい男の視線に焦らぬよう、静かに呼吸を整える。そして自分の間合いが整ったところで、真っ直ぐに彼を見つめて口を開いた。

「慰めて下さったことには感謝しますが、小川さんは女性との距離が近すぎるように思います。今みたいに、誰彼構わず急に抱き込んだりするのは、やめるべきです。

過剰なハグやボデイタッチは、恋人を不安にさせる行為だと認識した方が良いと思いますよ。例え悪気はなくても、あなたにとってそれが特別な意味を持たなくても、誤解を生みます。そして誤解というものは多くの場合、人を傷つけてしまう」

責める口調にはなり過ぎず、でもシリアスに冷静に、と意識して話しているうちに、私は自分のペースを取り戻していく。

「だれ彼構わずってつもりはないんですけど…葉子がそう言ってましたか?僕のこと」

少し表情を曇らせた彼にそう聞かれて、私は、はい、と即答した。この小川親太郎という人を相手に、これ以上隠し事をしたり、その言葉や行動の意図を詮索したりすることは無意味で、全てが裏目に出る気がしたからだ。

彼から視線をそらさず返事を待っていると、彼は、参った、と小さなため息を吐いた。

「神崎さんって、手強いんですね。僕の予想…というか想像とは随分違う人だ」

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