1/3のイノセンス ~友達の恋人~ Vol.3

「俺と彼女、どう見える?」2年以上片想いしていた彼から言われた、残酷な一言

特別だと思っていたのは、私だけだったの−?

広告代理店でコピーライターをしている橋本杏(24歳)は、同期の沢口敦史(24歳)に淡い恋心を抱いている。

“友達以上”の態度をとる敦史に期待してしまう杏。

しかし偶然の成り行きで、杏は学生時代からの親友・優香と敦史を引き合わせてしまったことから関係が一変。

杏のあずかり知らぬところで二人は連絡先を交換。

優香から「敦史くんとデートしてもいいかな?」と相談されてしまう


慟哭の夜


その日、自宅に戻ることができたのは深夜遅く、日付が変わった後だった。

目黒駅から徒歩5分の場所に借りた部屋は、利便性に反し静かなエリアにある。深夜ともなれば物音ひとつ聞こえない。

「ただいま…」

誰もいない暗闇にそう独りごちたら、静まり返った部屋に疲れ切った声が響いた。途端に孤独と虚しさが襲ってくる。

−私、敦史くんからデートに誘われたの−

あの時、優香はどんな顔をしていたっけ。そして私は、いったいどんな表情で彼女の言葉を聞いていただろう。

…どうして、優香なの。

電気もつけぬまま、フラフラと力なくベッドに腰掛けた。

窓の外に広がる闇と一体化した部屋で、私はたった一人、何度もなんども同じ質問を繰り返すのだった。

私のほうがずっと敦史を知っている。彼のことをわかっている。優香なんかより私のほうが、ずっとずっと敦史のことが好きなのに。

それなのに、どうして敦史は優香をデートに誘うの...。

考えれば考えるほど、震えるほどの後悔が襲ってくる。

どうしてあの時、優香を呼んでしまったのだろう。浅はかにも、敦史と優香を引きあわせてしまったのだろう。

どうしてもっと早く、素直な気持ちを伝えなかったのだろう。

私と敦史は親友なんかじゃない。私の中で、敦史はずっと特別だった。出会った時から、ずっと。

それなのに…私じゃない誰かが、敦史の1番になるなんて。それがよりにもよって、優香だなんて。

涙はとめどなく溢れるけれど、もうそれを拭う力さえ湧いてこない。長い間抑え続けた感情を爆発させるように、私は声をあげて泣いた。

誰に気づかれることもなく、たった一人で。

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