200億の女 Vol.3

この男、怪しい…。女が、男の身辺調査をすることに決めた、ある“違和感”とは?

騙されたのは女か、それとも男か?
「恋」に落ちたのか、それとも「罠」にはまったのか?

資産200億の“恋を知らない資産家の令嬢”と、それまでに10億を奪いながらも“一度も訴えられたことがない、詐欺師の男”。

そんな二人が出会い、動き出した運命の歯車。

200億を賭けて、男と女の欲望がむき出しになるマネーゲームはやがて、日本有数の大企業を揺るがす、大スキャンダルへと発展していくのだが、男が最初の駒に選んだのは、令嬢の部下だった。


店の前で時間を見ると19時25分。約束の5分前だ。

部下の富田葉子が予約してくれた銀座のフレンチレストランのドアを開けようとした時、バッグの中の携帯が着信した。富田からのメールだった。

「神崎さん、大変申し訳ありません!退社しようとしていたら、急ぎの書類提出を経理に頼まれてしまいまして、今タクシーで向かっているのですが、少し遅れてしまいそうです。大変申し訳ありません。

彼にも連絡した所、もう店にいるということですが、わざわざ私のためにお時間頂いているのに…本当に、本当に、申し訳ありません」

申し訳ないを連発する文章から、彼女の焦る様子が目に浮かぶようで、慌てなくて大丈夫よ、と返信してから、レストランのドアを開けた。富田の名を告げると、ソムリエバッジをつけた姿勢の良い女性店員に、個室へと案内された。

「お連れ様が、お一人いらっしゃっています」

そう言いながらドアを開けてくれた女性店員に、ありがとう、と言って部屋へ入ると、ドアに背を向けて座っていた男性が立ち上がった。

振り返ったその顔を見た瞬間、私は、初めまして、と言いかけた言葉を飲み込んでしまった。

―なんで、彼がここに。

モナコで出会ったあの男性が目の前に。

今日ここで紹介されるのは、部下の恋人のはず。

―まさか…。

予想外の状況に、脳内の処理が追いつかない。立ち尽くした私を、店員が椅子を引き促す。

言葉を発することはできないまま、私がなんとかそこに座ると、男性も座り、お飲み物のリストです、と店員がテーブルの上に黒い革のブックを置いて立ち去った。そのドアが閉まるのを待って、彼が口を開いた。

「神崎さん、ですよね。初めまして。お会い出来て光栄です」

―はじめ、まして?

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