SPECIAL TALK Vol.57

~皆が喜ぶ状況をつくる、そのシンプルな想いが埋もれている個人と企業をつなぐ事業を生んだ~

苦労を乗り越えて10年。サービスはもはやインフラに

金丸:お話を聞いていると、ものすごくナチュラルに起業に至っていますよね。上司に持っていって反対された。だったら自分でやるしかない。こうしてみると、守旧派の上司がいるということ自体は、悪いことじゃないかもしれません。企画を潰されたあと、居酒屋で愚痴るだけなのか、自分でやってみようとするかが命運を分ける。秋好さんの場合は、そこで覚悟を決めたわけでしょう?

秋好:とはいえ、1年は悩みましたよ。最後は、正月に一人でホテルにこもって大量の本を読み漁り、本当に起業したいのかどうかを自問自答して、踏ん切りをつけました。

金丸:意外と悩まれるんですね。

秋好:ほかの起業家に比べると、あまりリスクを取らないタイプかもしれません。悩んで考え抜いて、それでもやると決めたら「エイヤ!」とやりますが。でも大変だったのは、起業してからでしたね。あまり仲がよくなかった弟を巻き込んだりして。

金丸:えっ。兄弟で起業されたんですか?

秋好:そうなんですよ。起業したのが2008年4月、「ランサーズ」のリリースが12月だったのですが、その間に一緒にやろうとしていた人がいなくなり、システムを発注していた会社がなくなり……。七転八倒の末、猫の手も借りたいということで、弟に「手伝ってくれ!」と頼み込みました。

金丸:弟さんはそのとき、何をされていたんですか?

秋好:大阪のウェブ制作会社に勤めていました。

金丸:それでよく手伝ってくれましたね。

秋好:手伝ってくれないとどうしようもない状況だったので、「とにかく会社に『3ヵ月休む』と連絡してくれ」と(笑)。

金丸:めちゃくちゃだ(笑)。でも、弟さんはOKしてくれた。

秋好:本当に助かりました。はじめは3ヵ月という約束でしたが、今もランサーズに残って活躍してくれています。ずっと一緒にいるとすぐ喧嘩になるので、今ではふたりきりになることはほぼありませんが(笑)。

金丸:リリース後は、順調にいきましたか?

秋好:いえ、苦戦しました。それまでにない新しいサービスということで、多くのメディアに取材され、フリーランスの登録者数も増えていったのですが、発注側である企業の登録数がなかなか増えませんでした。最初の2年間は、出勤するのが苦痛で仕方ないという時期もありました。

金丸:資金調達はどう工面されたのですか?

秋好:当初はずっと自己資金でやっていました。というのも、NHKで放送されていた『ハゲタカ』というドラマを見て、「ベンチャーキャピタルは怖い」と思い込んでいたんです。「こんな人たちのお金を入れたら最後、血を抜かれてしまう」と。

金丸:ちょっとビビりすぎじゃないですか(笑)。

秋好:でも東日本大震災のあと、状況が変わりましたね。これまでとは違う、新しい働き方を探したいという個人が増えました。それに伴って、企業の考え方も少しずつ変わっていき、それまで100〜200件くらいだった月間依頼数が、1,000件にまで伸びました。

金丸:成長のアクセルを一気に踏み込むべき時期が来たと。

秋好:そうですね。成長という点でも、安定的な運営という点でも、外部の資金に頼るべきだと決断したのが、2013年のことです。僕たちが報酬を支払っているのは、個人です。システムのトラブルで報酬の振込が1日遅れたら、ランサーズの利用度が高い人に大変な迷惑をかけてしまう。実際、登録者の方から「電気・水道・ガスよりも、私にとってはランサーズが大事です」というメールをいただき、すでにインフラになっているんだなと実感しました。

金丸:インフラであれば、安定性を求められるのは当然ですからね。

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