港区モード Vol.3

最後の男:“条件”で選んだ夫に募らせる不満。既婚者食事会に参加する、人妻女の胸の内

“世間の男は30歳を過ぎた女に厳しい”なんて言われるけれど、そんなのは東京の、特に港区周辺では全く当てはまらないのだなと、最近よく思うのだ。

30歳を過ぎていても、まっとうな男ほど女を丁重に扱う。

たとえ男性の方が年下であっても、こちらが既婚者でも、二人で食事に行けば予約から会計までスマートにこなしてくれる。

もしかしたら私の夫も、外でこんな風に、私の知らない女の人を丁重にもてなしているのかもしれない。

その想像は、私をほんの少しだけ複雑な気持ちにするものの、それよりも誇らしさの方が勝ってしまう。

まるっきりモテない夫より、多少女性にちょっかいを出される方がいい。女性への気配りができない夫より、私以外の女性もきちんと丁寧に扱う方がいい。

友人にそう話すと驚かれることもあるけれど、私は本当に心からそう思っている。

「それって、旦那さんをすごく信頼してるか、旦那さんに全然興味ないか、どっちかでしょう?どっち?」

そんな風に聞かれる度に、私は曖昧に笑ってごまかしながら、密かにこうも思っている。

やっぱり夫は、身を焦がすほどに「一番好きになった人」じゃないからかもしれない、と。



食事を終えると、開業医の彼とは西麻布の交差点で別れた。

自宅へ帰るタクシーの中で携帯を取りだすと、千沙ちゃんからLINEが届いており、メッセージを開くとそこには、簡潔にこう書かれていた。

“孝太郎と別れました。今度ゆっくり聞いてください”

食事会に行ったことに、罪悪感を抱えていた千沙ちゃん。

「一番好きな人」を「最後の男」にしようと一生懸命恋愛をしている彼女が、私はとても羨ましくなる時がある。

“いつでも話聞くよ”と千沙ちゃんに返信して、私はそのままスマホで、ある会社を検索する。

渋谷にある、まだ小さいスタートアップ。

その会社のホームページに書いてある社長の名前を、食い入るように見た。

—博樹…。

そこには、私が人生で一番好きになった人の名前が書かれている。彼は、私と別れた後、ちゃんと夢を叶えていたのだ。

そして私は来週、博樹と会う。

二人きりではなく、共通の友人たち数名での食事会。約7年ぶりに会うことに、私は今でも迷いがある。

会っていいのか。
会わない方がいいのではないか。

何度も何度も考えたけれど、最後はやっぱり「会ってみたい」という気持ちが勝ってしまい、今の私は博樹に会う日を、子供のように指折り数えているのだった。


▶NEXT:6月18日 火曜更新予定
博樹と再会した薫はどうなる…!?


今週の港区モード:「ロロ・ピアーナのスエードブルゾン」


最高級のマテリアルを提供してきたテキ スタイル&ヤーンメーカーからスタートしたロロ・ピアーナ。同ブランドならではの素材の良さが際立つ一着は、極上の素材とGジャンのディテールを踏襲した普遍的なデザインの邂逅によってタイムレスな魅力を放ち続ける。

ブルゾン¥716,000 、ニット¥116,000 、パンツ¥107,000 、シューズ¥81,000〈すべてロロ・ピアーナ/ロロ・ピアーナ銀座並木通り本店03-3572-0303〉、時計¥1,760,000〈ゼニス03-5524-6420〉、サングラス/スタイリスト私物


まるでビロードのような光沢を放つスムーススエードにひとたび触れればその、しなやかなタッチに思わず心を奪われるはず。こんなカジュアルなブルゾンでも、圧倒的に上質な素材を使用した一着ならば、しっとりとした高級和食店にも気兼ねなく顔を出すことができる。

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

この記事へのコメント

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No Name
どうしても船田さんに気を取られて、話がなかなか入ってこない(笑)
2019/06/11 06:2899+返信3件
No Name
登場人物も背景も楽しい上、毎週船田さんをタイミングよくブッ込んでくる、そこが新鮮で好き🧡
2019/06/11 05:2194
No Name
夫に不満はなくない?
自分の決断に満足出来てないだけでしょ〜
2019/06/11 05:1651返信4件
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