2019.03.30
Who? Vol.10—この男は、誰だ?—
明晰な頭脳と甘いマスク、輝かしい経歴を武器に、一躍スターダムにのし上がった男がいる。
誰もが彼を羨み、尊敬の念さえ抱いていた。
だがもしも、彼の全てが「嘘」だったとしたら?
過去を捨て、名前を変え、経歴を変え、顔を変えて別人になり、イケメンジャーナリストとしての地位を手に入れた、レオナルド・ジェファーソン・毛利。通称『レオ』。
レオの、秘密の過去を知る唯一の人物であり、芸能界の「女帝」と呼ばれる一条茜が死んだことを境に、不可解な出来事がレオの周りで起こり始めるのだった…。
そしてその『女帝』の死を巡って、週刊誌の記者・須田歩が、レオに取材と銘打ち、動画収録を申し込んだ。
「怪物と戦うものは、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。―ニーチェー」
「確かにそのテーブルは、新潟のものです。でも…どうして、その品が新潟からのものだとご存知なんですか?」
レオは、自分の返答が予想外だったために須田歩が言葉を失ったのだと想像していたけれど、実際は違っていた。
―随分、簡単に認めたわね。
あっさりと、新潟との関わりを認めたレオに、歩は少し驚きはしたものの次に繰り出す言葉を、慎重に選んでいるだけだった。
そもそも自分より何もかもが格上の相手に挑んでいるのは分かっている。予想外の展開だと覚悟していた。
無意識に俯いてしまったけれど、歩は真っ直ぐにレオを見つめ返した。レオは穏やかな微笑みをたたえながらも、心配そうな顔で言った。
「答えにくい質問でしたか?」
世間に、セクシーだと評されるその声はとても優しく響いているはずなのに、なぜだかゾッとする。それでも歩は負けないように、笑顔を作って言った。
「そんなことはないんですけど…」
言い淀んだ歩に、レオが「ああ」と少し大きな声を出した後、続けた。
「もしかしてあまり公にできない方法で調べたりしたんですか?パパラッチと呼ばれる人たちの、何というか…お仕事熱心な執念みたいなものには慣れているので、言っていただいても僕は一向に気にしませんよ?」
レオは、さらりとした口調の中に挑発的な文言を混ぜてくる。今この瞬間もカメラは回っているというのに、この余裕はどこから来るのか。歩がそう思った瞬間、レオがにこりと微笑んだ。
―もしかして…私の狙いを、全て分かってるの?
焦りで胸の鼓動は早くなる。反射的に手が震えだしたのがバレないように、歩は背中の後ろで手を組んで、茜の教えを自分に言い聞かせる。
―ダメ。駆け引きのタイミングを間違えちゃだめ。
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