略奪愛 Vol.17

妻を欺き、略奪愛を誓う男女。2人がホテルで交わした秘密の約束とは

大谷が目黒の家に戻ってきたのは、ウェスティンで再会した2日後のことだった。

しばらく妻のいる自宅に戻らなくて済むよう、大きなスーツケースを抱えて。

再び始まった大谷との日々。それは穏やかで和やかで、輝きに満ちていた。

こんなことは長く続かない、一歩外に出れば針の筵なのだとわかってはいる。しかし二人で過ごす時間があまりに自然で、当たり前で、私たちの間には何も障害などないのではないかと思えてしまうのだった。

ふとした瞬間、大谷の妻について思い出すこともある。

彼女は今頃、どうしているだろう。悲しみに暮れているだろうか。それとも怒りに震えているだろうか。大谷を取り戻すため、捨て身の行動に出るかもしれない。

そんなとき、私は急に不安が募り情緒不安定になってしまう。しかし大谷は私が暗い顔をしていると必ず、優しく抱きしめてくれた。

「大丈夫だから。必ずなんとかする」

これまでにも、もう何度も聞かされた言葉。しかし同じセリフでも、今となってはこれまでになく力強く響く。

なぜなら大谷は、妻を振り切って家を出てくれたのだ。リスクを冒してでも、私と一緒にいたいと思ってくれた。

言葉ではなんとでも言えるかもしれない。しかし行動は嘘をつかない。大谷は家を出た。妻よりも私と生きる未来を選んだ。そのことが、私を何より勇気付けてくれた。

−どうか。どうかもう諦めてください。

残酷な願いであることを知りながら、彼の腕の中で、私は何度も何度も強くそう願った。

母親の勘…?


今夜も大谷は妻の元ではなく私の元に帰ってきてくれるだろうか…。再び二人で暮らし始め、そんな心配をようやくしなくて済むようになった頃。

千葉にいる実家の母から電話があった。

「明日香。今度の土曜、お家に泊まらせてもらえる?」
「え!」

思わず、素っ頓狂な声が出た。 ......


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