Who? Vol.5

狙った男を落とすため。4,500万を払って、絶対に誰にも秘密の計画を実行した女の、心の闇


「…助ける、って…?」

「まずは、あなたのお父さんの借金をすべて、私が返してあげる」

「すべてって…あの、父の借金は4,500万円あるんですよ?今日の電話の男が言ったのは…というか、そもそも、一条さんが僕の家のことで、あの、そんな大金を…いや、大金じゃなきゃいいってわけでもないんですけど」

わけが分からず、うまく単語を並べられなくて、ひどく支離滅裂で間抜けな返事になった。その自覚はあったが、言葉も頭の中も、どうにもまとまらない。

「今まで随分大人びて見えてたけど、あなたでも年相応のリアクションするのね。可愛いとこあるじゃない」

“可愛い”という言葉にカッとし、僕はつい、言葉を強めてしまう。

「バカにするのも、からかうのもやめてください。今日は本当に疲れてて、どうして良いか分からないんです。だから…」

「バカにしたりしてない。これは真剣な提案よ」

一条さんは僕を落ち着かせるように、僕の手に自分の手を重ねた。ひんやりとした感触に一瞬意識を奪われて、思わず顔を上げると、彼女はひどく優しい目でこちらを見つめていた。

「今日のあなたのラジオ、たまたま聞いたの。本当に魅力的な声と喋りだったわ」

「…え?」

「素晴らしい才能なのよ。やっぱりあなたの声って、天からのギフトなの。あなたを見つけれられた私は、本当にラッキー。出会わせてくれた神さまに感謝だわ」

うっとりとした顔で一条さんは続けた。

「あなたの声には、4,500万円の価値がある」

―僕の、声に…4,500万円の価値…?

「私たちは親を選べない。親はいつも、親だというだけで私たちの人生に介入して、私たちの努力を壊して、無にしてしまう。なのに親を敬うべき?大切にすべき?親の尻拭いをするべきなの?」

言葉に強さが増していくと同時に、僕の手に添えられていた一条さんの手にも力がこもり、ぎゅっと握り締められた。

「そんなのおかしいわよね。私はね、あなたに本当に同情してるの。あなたの父親は今回だけじゃなくて、きっと何度も、これからも何度もあなたの人生を無茶苦茶にするわよ。

あなたはもう十分頑張ったじゃない。家族のために家計を助けて、自分の楽しみは全て後回しにしてきた。なのに、やっと東京に出て掴みかけた夢が、またお父さんに壊されようとしているのよ。

許せるわけないでしょう?子供が親の犠牲になって良いわけはないの。

だからあなたは、もう自由になっていい。解放されるべきなの。逃げなさい、お父さんから」

「…父から…逃げる?」

思わず声が出た。そんなことができるのだろうか。いつも半ば諦めてきた。父に囚われた人生。そこから、逃げられると?

「…どうやって…」

「私が、あなたの4,500万円を即金で返す。そして金輪際あなたに連絡をよこさないように、うちの弁護士から、あなたを脅迫する男に連絡させるわ。でも…それだけじゃ不十分ね。あなたの父親みたいな人には」


ー優也を言いくるめ、手に入れたつもりの女帝。しかし優也にも思惑が…ー.....

続きは、東カレアプリのストアよりご覧いただけます。

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この記事へのコメント

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No Name
優也が別人になってしまっても、佐藤さんとみっちゃんだけは気づいて、この時の気持ちをおもいださせてくれると信じたい…(>_<)
2019/02/23 06:0034返信1件
No Name
はぁーついに。。
スターウォーズだとアナキンがダークサイドに落ちた瞬間ですよね。
泣けます😭😭
2019/02/23 05:5430
No Name
胸が締め付けられる。
みっちゃん、みっちゃん、みっちゃん。。。
2019/02/23 06:4823返信2件
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