
~日本とバングラデシュ、一方的な支援ではなく、双方の課題解決を~
2020年のニューリーダーたちに告ぐ
教師不足により、満足な教育を受けられない途上国の子どもたち。
インターンでバングラデシュに滞在中、その光景を見た三輪開人氏は、自身の体験から、映像授業こそが彼らを救うと「e-Education」を立ち上げた。
それから8年、e-Educationの活動がなければ夢を諦めていたかもしれない多くの子どもたちが、大学進学を果たしている。
異国の地で創業し、教育分野にとどまらず、様々な社会課題の解決に向けて新しい挑戦を続ける三輪氏を突き動かすものは、いったい何なのか。それを探ることで、困難な時代に立ち向かうニューリーダーに求められていることが見えてくる。
金丸:今回はNPO法人「e-Education」の代表理事、三輪開人さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
三輪:こちらこそ、お招きいただき光栄です。
金丸:本日は伝説とも称されるイタリアンの巨匠・山田宏巳シェフがオープンさせた、港区南青山の『テストキッチン エイチ』でお話を伺います。イタリアンをベースにしながら、フレンチ、中華、和食のテイストを加えたり、店の中央にオープンキッチンを設置したりと、料理だけではなく、様々な挑戦を感じるお店です。
三輪:ありがとうございます。食事もとても楽しみです。
金丸:さて、e-Educationは、現在14ヵ国の発展途上国で活動されています。特に自分で動画を見て勉強する「映像授業」を用いて、子どもたちの教育支援を行っていますが、スタートはインドの東隣、南アジアのバングラデシュだそうですね。
三輪:はい。大学在学中の2010年、バングラデシュに滞在していたときに立ち上げました。新卒でJICA(国際協力機構)に就職したあとも並行して活動し、2013年10月にJICAを退職したあとは、e-Educationに専念しています。
金丸:私は日本の若者はどんどん起業するべきだと考えていますが、現実にはなかなか踏み切れない人が多い。そんななか、日本から遠く離れた国で事業を起こした三輪さんのような人は特に貴重です。今日は三輪さんがどのように生まれ育ち、バングラデシュにたどり着いたのか、そしてなぜ途上国の教育に携わるようになったのか、じっくりお聞きしたいと思います。
勉強しろとは言われずに、スポーツ少年として育つ
金丸:早速ですが、お生まれはどちらですか?
三輪:静岡県です。沼津市で生まれて、掛川市で育ちました。
金丸:グローバルに活躍されている三輪さんですから、ご両親も国際的なお仕事を?
三輪:いえ、まったくそんなことはありません。二人とも静岡県の田舎町出身で、父は公務員、母は看護師をしています。
金丸:意外にもご両親ともかなり堅い、安定的なご職業ですね。
三輪:本当に。なぜ僕が生まれてしまったのか(笑)。
金丸:掛川市といえば、サッカーが盛んなところですが、何かスポーツは?
三輪:「遊びといえばスポーツ」という感じでしたね。スポーツクラブに通って、1週間のうちサッカー3日、野球3日という生活で、野球は高校卒業まで続けました。
金丸:正真正銘のスポーツ少年ですね。テレビゲームをやったりはしませんでしたか?
三輪:まったく。父も母もゲームをさせない方針でした。僕自身、海外で働いていることもあり、最近では知育ゲームが増えてきた印象もありますが、やはり子どもは外で遊ぶのがいいなと思います。
金丸:ゲームをさせなかったということですが、ご両親は教育熱心でいらした?
三輪:それが、生まれてこの方、勉強しろと言われたことは一度もないんです。
金丸:意外ですね。ご両親の経歴からすると、「勉強して、いい大学に行って、大企業に就職を」なんておっしゃいそうですが。
三輪:まったくそんなことはなかったですね。父母ともに末っ子で、かつ貧しい家庭の出身だったので、僕にも弟にもやりたいことがあったら、全部やらせてやろうと決めていたらしくて。
金丸:それは素晴らしい。そう頭では思っていても、ついつい口を出してしまう親もたくさんいますから。
三輪:スポーツだけでなく、学びたいと思ったときも、「いいじゃん、いいじゃん」と応援して、そのための環境を整えてくれるような両親でした。
金丸:勉強だろうがスポーツだろうが、やりたいことを全力で応援してくれる。うらやましいかぎりです。
三輪:本当にありがたいことです。やりたいことは全部やりなさいという家訓のもと育ちましたが、あとになって、それが普通の家庭と違っていたことを知りました。