略奪愛 Vol.8

「別の男といるんだろ!?」嫉妬に狂い豹変した彼と、愛欲に溺れた女の修羅場

人のものを奪ってはいけない。誰かを傷つけてはいけない。

そんなことは、もちろんわかっている。

しかし惹かれ合ってしまったら、愛してしまったら、もう後戻りなんてできない−。

渋谷のWEBメディアで働く三好明日香(24歳)は、彼氏がいながらも上司・大谷亮(おおたに・りょう)に次第に心惹かれていく。

出張先のホテルで突然キスされ、止められない思いに気づく明日香。

大谷が結婚していることを知り距離を置こうとするものの、結局一線を超えてしまった二人は、略奪愛を覚悟するのだった。


昭人:「まさか、あの明日香が…?」


−終わった…。

試験終了の合図が響く。

退室を始めた受験生たちの足音や話し声を聞きながら、僕はまるで体中のエネルギーが奪われたかのように暫し放心した。

…正直、手応えを感じたとは言えない。しかし昨年までのように、箸にも棒にもかからないという出来ではないはずだ。望みはある。

−受かっているはずだ。

僕は自分にそう言い聞かせ、脱力しきった体にどうにか力を込めた。

もし今年もダメだったら…なんて、考えたくもない。一足先に社会人となった友人がみるみる大人びていく中、これ以上勉強漬けの日々を送るなんて地獄でしかない。


「小暮くん!」

試験会場を出たところで、聞き覚えのある声に呼び止められた。

田島由香里(たじま・ゆかり)。大学時代の同級生であり、同じ公認会計士を目指す受験仲間でもある。駅への道を急ぎつつ、僕たちは未だ興奮気味に試験の感想を語り合った。

彼女はどうやらかなり自信があるようだ。その晴れやかな表情を前に、僕は思わず黙り込んでしまう。すると由香里はふいに話題を変え、「そうだ」と思い出したように尋ねてきた。

「そういえば小暮くんって、三好さんと今も付き合ってる?」

...なぜそんなことを聞くのだろう。

訝しみながらも「ああ」と答える。僕は彼女にチラと目をやり、言葉の続きを待った。

しかし由香里は「そう」と呟くだけ。そして僕からサッと視線を逸らすと、「あそこに知り合いが」などと言って走り去ってしまったのだ。

彼女がいなくなったあと、僕はすぐさま明日香にLINEをした

“今夜、家に行ってもいい?”

しかし彼女から戻ってきた返事はNOだった。体調が悪いのだという。

モヤモヤと、なんとも言えぬ不快感が胸に残った。

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