夫婦の秘め事 Vol.3

「男にとって“妻”と“女”は別物」浮つく心を捨てきれぬ既婚男の、忘れられない一夜

−この人だけを一生愛し続ける−

そう心に誓った日はもう遠い昔…。

結婚生活が長くなれば、誰にだって“浮つく瞬間”が訪れるもの。美男美女が行き交う東京で暮らすハイスペ男女なら尚更だ。

では、東京の夫/妻たちは一体どうやってその浮気心を解消し、家庭円満をキープしているのか。

これは、既婚男女のリアルを紡いだオムニバス・ストーリー。


第3話:浮気心を捨てきれぬ男・藤木悟の、忘れられない一夜


−今夜はもう少し、一緒にいられる?

この言葉をいつ発するか。

僕はもうかれこれ30分近く、獲物を狙うハイエナの如く彼女の隙を伺い続けている。

男女の関係はとにもかくにも“間”が要だ。特に今夜の僕と彼女…木下百合のように、アリにもナシにも転びうる場面では。

しかしそんな緊張感ある駆け引きを続ける僕の心中を知ってか、知らずか。彼女は残酷なまでにあっさりと僕の下心を粉砕するセリフを吐いたのだ。

「私、そろそろ帰りますね。今夜は夫の帰宅が早いので」

…僕もバカじゃないから、この発言が“ナシの宣告”であることくらいはわかる。

だいたい彼女はこれまで何度も僕と日付が変わるまで飲んでいる。しかしただの一度も、夫の帰宅時間を気にするそぶりなど見せたことはなかったのに。

−俺、何か気に障るようなこと言ったっけ…?

「遅くまで付き合わせちゃって悪かったね。ありがとう」

そそくさと帰り支度を始める木下百合にそう声をかけながら、僕は彼女との今宵の会話を必死で思い返してみる。しかしどこで何を間違えたか、さっぱりわからなかった。

−まあ、こうなった以上は仕方がない。

彼女を乗せたタクシーが走り去ってしまうまでは、惜しいことをしたという後悔もちらついた。しかし姿が見えなくなってものの数分も経てば「ま、いいや」と思える。

…言ってしまえば、僕にとって木下百合はその程度の女ということだ。

木下百合は確かに美しい。しかし美しい女なら、他にもいる。

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