2018.11.21
SPECIAL TALK Vol.50大学に進学するも、CAの夢を断たれる
金丸:さて、大学はどちらに進学されたのですか?
坪内:名古屋外国語大学です。日本航空のCAの方が客員教授をされていたので。当時の私はCAになることしか考えていなくて、できる限りその先生の講義をとり、その隙間に必須科目を入れていました。
金丸:最短ルートでCAを目指そうと?
坪内:ええ。インターンで実習を受ければ、ほぼ確実に就職できる時代でしたから、インターンにも申し込みました。何百人という応募者のなかから最後の3人という枠に残れたのですが、いよいよインターンが始まるという1週間前に、朝起きたら高熱で動けなくなり。体温を測ろうにも、体温計の表示にエラーが出てしまって。病院に行くと、「悪性リンパ腫の疑いがある。余命は半年だろう」と宣告され、目の前が真っ暗になりました。
金丸:それは相当なショックですね。
坪内:幸いリンパ腫ではなかったんですが、やはり原因がわからない。3ヵ月くらい病院をたらい回しにされ、愛知の病院ではどこも原因不明と言われるので、実家に戻り、福井でもひたすら内科、外科、整形外科、耳鼻科と回されました。その後も微熱が続いてすぐに倒れてしまう。CAは体力勝負なのに、この調子では無理だと絶望しました。
金丸:CAになりたい一心で大学も選んだのに。
坪内:だから、大学にいる意味もないなと中退を決意し、結婚することにしたんです。
金丸:えっ、いきなり結婚ですか?
坪内:正直、生き急いでいたのかなというのはありますね。相手は勤務医で、彼の勤務地だった萩に引っ越しました。すぐに息子を授かったんですが、結婚生活はうまく行かず離婚することに。ただ離婚が成立するのに、2年半かかりました。
金丸:そのとき、もともと萩とは縁がなかったわけですから、萩を去ろうとは思わなかったんですか?
坪内:思いませんでしたね。息子にとってのふるさとは、萩ですから。それに現実的な理由として、離婚調停は地元の萩の裁判所で行わないといけないんです。福井の実家から通うのは大変だったので。
ひとりの漁師との出会いから、導かれるように船団代表に
金丸:その後は、何がきっかけで漁業に関わるようになったのですか?
坪内:子どもとふたりで生きていくために、何か仕事をしなければと思っていたとき、萩の観光協会から翻訳の仕事を頼まれました。そこから繁忙期に旅館の宴会場で仲居さんたちのお手伝いもするようになり、そこで現在の萩大島船団丸の船団長を務める長岡秀洋と出会いました。それが2009年の12月のことです。
金丸:それまでまったく縁のなかった漁業と、初めて接点が生まれたわけですね。
坪内:でもそのときは、「自宅で翻訳やデータ処理の仕事をしているので、何かあったらよろしくお願いします」と挨拶したくらいで。ところが、年が明けてすぐ長岡に電話で呼び出されました。行ってみると、長岡と、巻き網漁の船団を率いる2船団の社長ふたりから相談されたんです。「魚が獲れなくなりつつあるから新しいことをやろうと思うけど、どうしたらいいかわからない。何か考えてくれ」と。
金丸:また、ざっくりした依頼ですね(笑)。
坪内:丸投げでした(笑)。あとからわかったことですが、長岡たちも自分で直販をやろうと試してみたものの、交渉の仕方もビジネスマナーも知らないからトラブル続きで、断念したらしくて。
金丸:でも、自分たちで行動を起こそうという熱意があるだけ素晴らしいですよ。多くの農家や漁師が「このままでいいのか」と不安を感じながらも、何もアクションを起こせないでいます。
坪内:私もその熱意に惹かれて、引き受けることにしました。その直後に農林水産省が「6次産業化・地産地消法」に基づく認定事業者申請を受け付けることになり、長岡から申請のための事業計画書を書いてほしいと頼まれました。
金丸:「6次産業化」は、地方創生におけるキーワードのひとつです。生産者(1次産業)が製造・加工(2次産業)、そして販売(3次産業)まで手がけるという。
坪内:認定事業者になれば対外的な信用が得られるので、ぜひ申請しようという話になりました。
金丸:ところで、坪内さんは事業計画を立てた経験があるのですか?
坪内:いえ、まったくありません。最初に書き上げた計画書を今見ると、全然なっていないんですが、それでも長岡たちは大喜びでした(笑)。申請者の団体名を書く欄があったので、3船団をまとめた任意団体として「萩大島船団丸」を結成したのが、2010年10月です。当初、船団丸の代表は長岡でしたが、「難しいことはわからないし、計画書を書いたんだから、あんたがやってくれ」と、翌年には私が代表に。
金丸:長岡さんに出会ってからあっという間。激動の人生ですね。
坪内:そうですね。農水省に書類を提出すると、どんどんツッコミが入って、そのたびに書き直しました。最初は漁業のことをまったく知らないまま書いたので、事業計画の根幹である現状分析もマーケティングもまともにできていなくて。漁業の仕組みや漁師たちのことをもっと知らなければいけないと思って、まずは萩市の漁業関係者たちから探っていこうと考えました。そこで、浜辺で息子と魚釣りを。
金丸:えっ。どういうことですか?
坪内:地元の人や釣りが趣味の人が絶対にやらないような場所で釣りをしていれば、絶対に誰か声をかけてくると考えたんです。そのほうが「なんだ、この女は?」と警戒されないでしょう?
金丸:なるほど。策士ですね!
坪内:実際、漁師の方が話しかけてきてくれて、この辺りではこんな魚が獲れるという話から、漁師と漁協の関係、現状への不満などいろいろなことを聞き出すことができました。
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