寒くなるほどに、魚介が脂をたっぷり蓄え、美味しさを増してくる。そんな食材の味わいを心ゆくまで堪能するなら、やはり和食に限る。
今回訪れたのは神楽坂で人気を博し、今年いよいよ銀座に進出した若き名店『蓮』だ。
店主の三科氏が作り出す正統派の和食に、ビールを合わせて味わう最高のひと時をお届けしよう。
銀座という地で新しい『蓮』に出合う
2009年、神楽坂の和食の名店『石かわ』の姉妹店として誕生したのが、今回紹介する『蓮』だ。
今年6月に世界有数のグルメエリアであり名店ひしめく “銀座”に移転。神楽坂時代にはなかった個室や、調理場の拡大も手伝い料理の幅は以前に増して広がっている。
そんな注目店の店主・三科氏は、『石かわ』で23歳から煮方をはじめ、30歳で『蓮』の料理長に就任した実力派である。
神楽坂時代から、しっかりと和食の基本に寄り添うように正統派を貫く三科氏は、この新天地で新しいことにも挑戦している。
例えば、銀座の食通の心をぐっとつかむ、ライブ感のあるプレゼンテーションがそのひとつだ。
距離感の近いカウンター越しに「見せる調理」で生まれる、香りや音は、心が踊り、堪らなく人を惹きつける。
香ばしい蟹とビールの香りが最高のマッチングを魅せる!
この日1品目として用意していただいたのは、「松葉蟹の炭火焼き」。
客席には、美しい土楽窯の水こんろがセットされ、目の前でふつふつと蟹が焼き上げられていく。
このわずかなひと時の香りと音色に、食欲を刺激されない人はいないだろう。五感全てで美味しさを感じる瞬間だ。
焼き上げた蟹の身をほぐし、すだち、鰹と昆布出汁のジュレで味つけを施し、蟹味噌をのせ完成。
余熱で火が入ることを計算し、絶妙な加減で焼き上げる蟹はしっとり柔らかな食感。口に入れれば、蟹の旨みと甘みが炭火の香りをまとい、最高のひと時を与えてくれる。
蟹とヱビスビールのマッチングは最高で、焼き上げている間に漂い始める蟹のいい香りだけでも1杯飲み干せてしまいそうなほど。
ひと口食べる毎にふくよかなヱビスビールのコクと、蟹の旨みと甘みのマリアージュを楽しんで欲しい。