オールドリッチの悲哀 Vol.7

「金目当ての女」を襲う、因果応報。婚約者のドス黒い腹の内を知った女の、複雑な心情

先祖代々受け継がれし名声と財産。

それを守り続けるために、幼い頃から心身に叩き込まれる躾と品位。

名家の系譜を汲む彼らは、新興のビジネスで財を成した富裕層と差別化されてこう呼ばれる。

「オールドリッチ」と。

一見すると何の悩みもなく、ただ恵まれた人生を送っているように見えるオールドリッチ。

しかし、オールドリッチの多くは、人からは理解されない苦悩や重圧に晒されている。

知られざるオールドリッチ達の心のうちが、今、つまびらかにされる−。

前回は、家柄と愛の狭間でもがく紀之を紹介した。今回は?


【今週のオールドリッチ】
名前:野々宮静香
年齢:25歳
職業:家事手伝い
住居:青山


パークハイアットの40階からの眺めは、夜が深まるにつれ輝きを増していく。

日本料理『梢/パーク ハイアット 東京』での夕食は既に終盤に差し掛かっていたが、静香の胸には夕方に鑑賞したオペラの余韻が未だ残っていた。

「小田さん、今日は素晴らしい“椿姫”に誘っていただいてありがとうございます。1幕のアリアには感動しました」

「美しいソプラノでしたね。静香さんをお誘いしてよかったです」

お見合いで出会ってから4回目のデート。ぎこちなさの残る静香と小田だが、共通の趣味であるオペラの話をする時だけは互いに饒舌になるのだった。

「そういえば“椿姫”って邦題と、イタリア語の原題“ラ・トラヴィアータ”は全く違う意味なんですよね。えっと、どういう意味だったかしら…」

話を振る静香だったが、小田は答えない。真面目でシャイ、いかにも女性慣れしていない小田は、急に姿勢を正すと目を伏せ耳を赤くしながら言った。

「静香さん。僕との結婚考えていただけますか?」

その言葉に、静香は即答することができない。

「もう少し考えさせてください…」

照れたふりをしてそう答える静香は、とある不安を抱えていた。

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