義弟の婚約者
「初めまして。高山恵里奈と申します」
夫の実家は、元麻布にある少し古いが立派な作りの一軒家だ。そこに現れた太一の婚約者・恵里奈は、想像以上に可愛らしかった。
薄化粧の下には、大きな瞳に長い睫毛、尖った小さな顎に血色の良いふっくらとした唇。そして、艶のある自然な栗色のミディアムヘアに、服装はツイードの上品なワンピースと、同性から見ても好感が持てる。
年齢は29歳で、仕事は大手メーカーで一般職をしているらしい。
「あら、可愛らしいお嬢さん」
彼女を一目見た義母は、嬉しそうに微笑んだ。末っ子である太一のことを、ずっと気にかけていたのだ。
「わぁ、素敵なお家ですね。太一さん、こんな素敵なところで育ったのね」
家を褒められてまんざらでもない義父母と、愛おしそうに恵里奈を見つめる太一。それは、幸せな家族の風景そのものだった。
「兄の譲です。そして妻の美香です」
「初めまして」
二人の挨拶に対し、恵里奈は一人一人の目を見て軽く会釈しながら微笑んだ。
しかし彼女と目が合った瞬間、美香は何か異様なものを感じた。
―なんだろう……。この違和感というか…、妙な感じ…。
それは、ほんの些細な違和感だった。何が引っかかったのか自分でも分からないし、そんな勘などあてにもならないのだが、気になって仕方なかった。
ー気のせいだよね…。もしかしたら無意識のうちに、未来の可愛い義妹に嫉妬でもしたのかな…?
そう思い直し、その気持ちにすぐ蓋をした。
「じゃあ、そこに座っててくれる?今、お茶入れるわね」
「あ、私も手伝いますね」
美香がそう言って義母と一緒に台所に立とうとすると、恵里奈はカバンからさっとエプロンを取り出して「私もお手伝いします」と向かった。
―エプロン持って来たんだ…。すごく準備のいい子なのかしら…?
そう思う美香をよそに、義母は優しく声をかける。
「あら!いいのよ、恵里奈ちゃん。今日はあなたが主役なんだから、ゆっくりくつろいでてね」
「いえ…でも…」
彼女は申し訳なさそうにしていたが、美香も義母に同調した。
「そうよ、私もいるしね。太一さんと一緒にいてあげて?」
「わかりました、ありがとうございます。でも、何かあったら気軽に言ってくださいね」
恵里奈はそう答えると、二人に笑顔を見せて男性たちの居るリビングへと向かった。
ーすごく気の利くいい子だわ。太一君、良かった。
和やかな雰囲気で食事が始まった。すると恵里奈は、家族一人一人にお土産を渡し始めた。
この記事へのコメント
この女、おかしいと思って当然だとじゃないかと。
最近東カレさん、メンヘラとかサイコパスとか多くない?笑
絶対数が増えてるってこと?