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  • 私、“彼好み”になれない Vol.2

    若手IT社長との恋。“彼好み”を演じていた女が、男の部屋で見つけた疑惑の形跡

    女なら、経験のある方も多いだろう。

    恋人にファッションをダメ出しされ、“俺好み”を強要されてしまうこと。そして愛されたいと願うあまり、自分の趣味を押し殺してしまうこと。

    総合商社勤務の芽衣(31歳)もまさに今、葛藤を抱えている。

    −私、“彼好み”になれない。−

    食事会で出会ったスタートアップのIT経営者・長谷川に気に入られ、デートに誘われた芽衣。

    しかし初デートで、個性的なデザインの服装をダメ出しされ、凡庸な女子アナ風ファッションを強要されてしまう

    あなたなら、恋人のために好きなファッションを諦めますか…?


    −わ、この靴も可愛い…!あ、こっちのドレスも素敵!

    通勤電車の中、信号待ちのわずかな時間も、芽衣はスマホ画面をスクロールする手が止まらない。

    先日、学生時代からの心の友・絢香に教えてもらったイタリア発のECサイトYOOX(ユークス)を覗いているのだが、あまりに好みのアイテムがありすぎてつい夢中になってしまうのだ。

    さらには名だたるハイブランドの商品が「え!?」と驚くような価格になっていたりするものだから、ついショッピングバッグにポチッと放り込んでしまう。

    しかし芽衣はそこで、はた、と思い出した。

    −清楚な感じの、俺好みの服を着て欲しい−

    デートの別れ際、長谷川剛に言われてしまったセリフだ。

    その言葉が蘇った瞬間、芽衣はそれまでウキウキと踊っていた胸がしゅん、と萎むのを感じ、小さなため息とともにスマホ画面を消した。

    画面に映っていたのはハイブランドの、洗練されたデザインの洋服ばかり。長谷川が言った「俺好みの服」ではない。彼はいわゆる女子アナ風ファッションが好きなのだ。

    ー今は、我慢しないと。

    彼とはその後ほぼ毎日のように連絡を取り合っており、確かな手応えを感じている。

    この微妙な関係の今は、自分が着たい服よりも、彼が気に入ってくれる服を選ぶのが正解なのだ。

    −やっぱり、次も女子アナ風ファッションにしておこう。

    芽衣は自分に言い聞かせるように、心で呟やくのだった。

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