あなたは、わたしのもの Vol.9

「あなたが結婚していても、かまわないのよ…」。妊娠中の妻がいる男を脅かす、美女の囁き

女の人の価値は、美しさだけではない。

どれほど純粋に自分を愛してくれるかだ…そんな風に思っていました。

でも、あの女のおかげで僕はやっと気がついたんです。

異常なほどの愛情が、女の人を、そして関わる人間の人生すらを壊してしまうってこと、

純粋な愛情は行き過ぎると執着に変わり、執着は憎しみへと変貌を遂げるってことを…

少し長いけれど、どうか僕の話を、聞いてください―

堂島ユウキの目の前に突如現れた黒髪の美女・ひとみ。次第に彼女の異常性に気がつき、ついにひとみと決別した。

ユウキは雅子と順調に愛を育んだ末に結婚する。失意のうちに実家に帰ったひとみだったが、ユウキへの想いを諦めきれずに東京行きの新幹線の切符を買ったのだった。


ーひとみ…?

午後7:00、五反田駅。

雑踏の中で僕は、たしかにあの女の後ろ姿を見た気がした。

雅子との結婚後、かつての家は引き払ったものの、父の事務所はまだこの駅にある。

どうしても立ち会わなくてはいけない契約を終え、急いで駅に向かった僕の数メートル先に、見覚えのある黒髪の女が、改札の方を眺めて佇んでいるー。

だが、ひとみであるはずはない。

なぜなら1年前、僕が逃げるようにして彼女との関係を解消した後、ひとみは当時勤めていた会社を辞めて実家に帰ったはずなのだ。

彼女と同じ会社に勤める女の子から聞いた、間違いのない話だと、秋吉が教えてくれた。



視線の先にいる黒髪の女は微動だにせず、改札の方を見続けている。

確認すればいい。あの女の前に回り、ああ人違いだったと胸を撫で下ろしたい。

だが、僕の足はすくんでしまい、どうしても改札の方へは動かなかった。

そしてやっとの思いでタクシー乗り場へ向かい、僕は愛する雅子の元へと向かうのだった。

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