ダディ Vol.5

「そこまでやるか…」。ハイスペック港区パパの戦い。イクメンの皮を被ったゲス男の、最低な手口とは

港区界隈に生息している、40代・既婚の男たち。その名も「ダディ」。

仕事での成功は当たり前。

ハッピーな家庭も築き、アッパーエリアの公園に出没。

夜はイケてる腕時計をチラつかせ、「オッサン」を自称しつつ、部下にシャンパンを奢る余裕もある。

自他共に認める勝ち組オトコ、それが「ダディ」だ。

これは、今まであまり表立って語られたことのなかった、彼らの物語である。

好調な”ダディライフ”を送っていたリョウ(42)

円満な家庭を支える堅実な妻を愛してはいるものの、華やかな美女の誘惑が絶えない。だが、会社の右腕だと思っていた加納の裏切りが発覚し、一気に暗礁に乗り上げる。


「四郎の代わりに?」

スマホに向かって思わず大きな声を出してしまい、朋美と美優がギョッとした顔でこちらを振り返る。

「ごめん、四郎ちゃん、これから家族で久々にメシ食いに行くんだよ。話ならまた後で…」

言い終わらないうちに、電話の向こうで四郎が懇願するような声を出した。

「頼むよ、リョウ。マリちゃんの幼稚園の運動会は、毎年パパ参加の競技もあってさ。系列のプリスクールも合同で結構大掛かりだし、みんな本気で勝ちに行くんだよ。けど俺その日はどうしても仕事休めそうになくてさ…」

ずいぶん前から四郎が参加表明していた、運動会での父親参加の競技。今さら欠席の連絡をするのは気まずく、娘にも妻にも顔向けできない。

頭を抱えた四郎が苦肉の策として思いついたのが、マリも慕っているリョウに、代わりに参加してもらうというかなり強引なアイディアだった。

愛娘の運動会に参加できない悔しさは痛いほど分かるが、リョウの会社もゴタゴタしておりそれどころではない。休日も返上で会社のピンチを乗り切ろうと奔走している今、1日運動会で潰れるのは考えられなかった。

だが、四郎は”奥の手”を行使する。

「リョウちゃん?」

可愛らしい声で電話口に出たのは、四郎の愛娘・マリだった。

「リョウちゃん、あのね。マリちゃんの運動会、来てくれる?」

…これでは、断れるはずがない。

しぶしぶ承諾し電話を切ると、四郎からマリちゃんの嬉しそうな顔の写真が送られてきた。

無邪気な子供の屈託のない笑顔にかなうものなんて、この世にひとつだってないのだ。

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