2018.06.24
教えたくない秘密のグルメ Vol.8広島に究極のビールを飲ませてくれる店がある。営業時間は17時から19時のたった2時間。
メニューはビールだけで、“ひとり2杯まで”というルール付き。そんな条件にもかかわらず、平日でも開店前には客が並び、その列は閉店間際まで途切れない。
ここで扱うビールは「アサヒ生ビール」一種類。私たちが普段飲んでいる銘柄となんら変わりがない。
変わるのは、そのビールを注ぐ人の技術である。その“注ぎ”の技術によって、その味を大きく変化させるのだ。
そこまで人を魅了するビールとは、一体どんなビールなのか。
同じビールでも“注ぎ方”で味が大きく変化する
『ビールスタンド重富』
辿り着いたのは、広島イチの繁華街・流川にある老舗の酒屋『重富酒店』。
その軒先にある角打ちのような小さなスペースが、噂の店『ビールスタンド重富』だ。
店先の看板に名を掲げるのはビールの作り手ではなく“注ぎ手”。
一度飲むと誰もが感動する重富 寛さんのビールを求め県外からも毎日のように客が訪れている。
メニューに載っているのは注ぎ方の種類。広島にある究極のビールとは、1種類のビールを注ぎ方で違う味に変える注ぎの達人・重富寛さんが作るビールなのだ。
10人も入れば一杯のスペースの中央に、ビールサーバーが2つ。昭和初期のカラン(蛇口)を復刻した“昭和のサーバー”と、現代の飲食店で使用されている“平成のサーバー”を注ぎ分ける。
“昭和”は流量が多くて旨みが出しやすくやわらかい泡が特徴。“平成”はキリッとシャープで泡がもっちり。
ビールを注ぐスピードや泡の立て方で、9種類の味に変化させていく。
「最初の一杯は一度注ぎがおすすめですよ」と重富さん。“一度注ぎ”は一回で一気に泡まで注ぎきる。勢いよくビールを注いで粗い泡を作るのがポイントだ。
この泡がパチパチと弾けながら、喉を駆け抜けていくような爽快感がすこぶる旨い。
適度に炭酸を逃しながら注いでいるから、グビグビと飲み干せてしまう。
そして、重富さんの注ぎの醍醐味を味わうなら“三度注ぎ”に尽きる。モコモコの泡もフォトジェニックだが、その味わいの変化に驚かされる。
まずグラスの底にビールを勢いよく当て、その衝撃で泡を作る。ビールと泡が1対1になったらあと2回繰り返して雲のように泡を立たせていく。
「泡立てるほどビールに含まれる炭酸とホップの苦みとタンパク質が減り、その3つの成分で隠れていた旨みを引き出せます。ビールの泡は蓋の役目と言われていますが、私は泡が味を左右する要素だと思っています。
泡は見た目、口当たり、喉越し、そして味わいを担う。日本人は、特に口当たりのいいものを好む傾向にある。だから、私は泡にこだわるのです」
唇に触れるとスッと溶けていくやわらかな泡の感触が楽しく、一度注ぎとは一転、ビールはなめらかでスムースな喉越し。
飲み比べてみると、同じビールなのに驚くほど味の違いがわかる。
「日本のビールはそもそも美味しいはずなのに、提供する側の理解不足でその美味しさが引き出せていない。だから、正しい知識を伝えていくことは、酒屋としての私の役割なのです」
“注ぎ”にこだわる男の究極の一杯。その背景には、酒屋としてビールの美味しさを伝えたいという矜持があった。
訪れれば生涯一のビール体験になることを約束する。
Photos/sono@bean, Text/Ayano Sakai@verb
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この記事で紹介したお店
ビールスタンド重富
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