こういう店があるから、新橋は面白い。烏森神社のそばの細い路地。サラリーマンの往来は絶え間なく、安居酒屋が並び、活気に溢れている。
そんなエリアに、この店はある。建物の印象は、正直“雑多”。が、臆せず階段を登れば、上質な料理と酒、寛げる空間が待っている。
いわゆる「新橋っぽさ」を覆す料理店。名店で腕を磨いた気鋭の店主がもてなしてくれる。
新橋らしい路地の喧噪から突然の静寂が期待を高める
『割烹 山路』
あらかじめこの店の存在を知らない一見ならば、階段を登ることはまずない。
場所は「こんなところに?」と誰もが驚く雑居ビルの2階。一見ではほとんどたどり着けないと言われる場所に『割烹 山路』はある。
それはすなわち、ここが知る人ぞ知る穴場である、ということ。
白い暖簾をくぐると、店内はカウンター5席とテーブル1卓という小体な造り。
控えめな佇まいに比例するかのように、柔らかな雰囲気で出迎えてくれる店主・畠山義春氏。魚が主役の名店としてつとに知られる銀座『割烹 智映』をはじめ、魚料理を得意とする店で修業を積んだ経験を持つ。
料理は、おまかせコース8,640円の一本勝負。2年前の開店当初は「近隣の店と比べて高い」と言われることもあったというが、それがむしろ功を奏した、と畠山氏。
静かな雰囲気の中、確かな料理を味わいつつじっくりと語らうことができると、40代以上の落ち着いた客層の支持を得た。
「ここなら接待にも安心して利用できる」という声が多いという。
先付、お椀、お造り……と、一般的な和食の流れで進むかと思いきや、おしのぎで握り鮨が登場するのが興味深い。
実は、畠山氏の父君は、かつて西麻布にあった鮨店『山路』で修業をした後、地元・岩手で同名の鮨店を営んでいた。その屋号を譲り受けて『割烹 山路』としただけに、鮨には並々ならぬ縁があるのだ。
この日は「ほぼ定番のネタ」だというスミイカとコハダに、本マグロ。趣向が変わって、酒がススむ。
揚げ物では、揚げたての天ぷらが登場し、コースをしめくくる食事は、手打ちの二八蕎麦。何も付けずに、そして塩で、と自信を覗かせる。
「楽しませたい」という思いが伝わってくる渾身の料理の数々。何かの節目に、ちょっとしたお祝いに、こういう店を選べるのがセンスがいいってこと。
Photos/Akihiko Uzawa, Text/Haruka Koishihara
いつもと違う「上質な新橋」を大人は知っておくべき!
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