大阪LOVERS Vol.7

「あんたとなら、東京に勝てる」“結婚”への退路を断った東京女が、大阪に心奪われた日

あなたが大阪に抱くイメージは、どんなものだろうか?

お笑い・B級グルメ・関西弁。東京とはかけ離れたものを想像する人も少なくないだろう。

これは、そんな地に突然住むことになった、東京量産型女子代表、早坂ひかりの大阪奮闘記である。

東京から大阪に転勤することになったひかりは、結婚を視野に入れていた隆二と離れ離れに。

憧れていたはずの隆二からのプロポーズを断り、頭痛のタネだった絵美子とも和解したひかりに、新たな恋の予感が訪れて…?


「よかったわ!二人が仲直りしてくれて!」

週末、大混雑の『シェイクシャック』で、ひかりは久しぶりに太郎と会っていた。

非番だった絵美子の計らいで、半ば強引に誘われた形だが、太郎にきちんと謝りたかったひかりにとってはとてもありがたいお誘いだった。

「ちゃうで。別にケンカなんかしてへんよな!俺がいらんこといったから、ひかりちゃんのハートを傷つけてしまってん。」

ポテトにチーズを大量に絡めながら、太郎が大げさに肩をすくめる。

「ううん。イライラして当たっちゃって、私こそ本当にごめんなさい。こういうのイラチっていうんだっけ。」

「ちょっとちゃうな!」

二人同時に絶妙なタイミングで突っ込まれ、コントの登場人物になったようにケラケラ笑う。

大阪に来てから毎日必死で、周りをみる余裕はなかったけれど、ここ何週間かは少しずつ独特の雰囲気にも慣れてきた。

アホちゃう?と最初に言われたときは、それはもうショックだったが、ネットで「親しみを込めた挨拶のようなもの」と説明されているのを見て、それ以降は気にしないようにしている。

「それ、なんぼした?」攻撃も、金銭感覚がしっかりしている証拠だと思えば、逆に頼もしいものだ。余計な見栄を張らず、本質を見ることを良しとする文化なのかもしれない。

今日も会計時、「イカ焼き30個買えるやん!」と小声で騒いでいた二人だったが、行列に並んでゲットしたハンバーガーには大満足したようで、今度はオープン前に並ぼうと大盛り上がりだ。

「ひかりちゃん、彼氏と別れたんやろ?」

突然そう聞く絵美子の横で、太郎が驚いたようにこちらを見る。

「今は一度離れて、よく考えているところなんだ。心機一転、大阪で頑張りますので、これからもいろいろよろしくお願いいたします!」

頻度は減ったが、相変わらず隆二からの連絡は絶えず、まだ別れたとは言えないのだ。

「ほー!なら俺も遠慮せず大阪案内しまくるわ!その前に、この遠慮のかたまり、食べていい?」

遠慮のかたまり。おそらく、残ったポテトのことを差しているのだろう。太郎はすでににんまり顔でフォークを持っている。

「うちもほしい!インジャンしよ!」

昔、ミニモニ。の歌「ジャンケンぴょん!」で聴いた以来、久しぶりに聞く「インジャン」に内心興奮したが、出すリズムが分からず不戦敗に終わった。



―今日は楽しかったです。ありがとう!

帰り道、グループLINEが既読になると同時に、別のボックスに太郎からのメッセージが届く。

―次こそは二人で大学芋!絵美子ちゃんの了承済です。

太郎のことはまるでタイプじゃないが、「二人で大学芋」という響きがおかしくて、思わずOKの返事を送っていた。

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