2018.06.29
婚活モンスター Vol.1食事会当日の午後、オフィスで離れた席に座っている咲から真理子のもとへLINEが入った。
「今日は19時30分にここのお店を予約してくれてるみたい。でも相手はあの商社だから絶対遅刻するよ。だから20時にお店着くようにしよ」
咲は彼らの残業時間を計算した上での集合時間を、真理子や後輩に送った。
真理子と咲は会社の後輩を2人連れ、予定通り20時にお店に入った。咲の予想通り、男性側からは20時を過ぎてしまうとの連絡がきていた。
今日の相手は、咲が先日友人と『ガーブ東京』で飲んでいた時に声をかけてきた、丸の内勤務の商社マンだ。
「遅れました、すみません!」
そう言いながらスーツを着た4人の男性がお店に入り、広い店内からすぐに真理子たちを見つけ出した。年は女性たちの2つ3つ上だろう。
「先に飲んでくれて良かったのにごめんね!じゃあ早速シャンパンから行こうか!」
その中の幹事と思われる男性が、おしぼりで額の汗を拭いながら店員にシャンパンを頼んだ。
「乾杯!」
細かい泡が口の中ではじける。
シャンパンを飲み干すと、4人の中の1人が先陣を切ったように話し始めた。その目線はやはり、咲の方を向いている。
「皆さんは大手町のOLさんなんですよね!」
「はい、そうですよー。皆さんは商社マンですよね?」
甘くおっとりとした口調で答える咲だが、幹事の男性は目を丸くしていた。
「そうだけど咲ちゃん、よく俺らの会社分かったね、前会った時、俺会社名言ったっけ?」
「言ってなかったですけど、勤務地は丸の内っておっしゃっていたんで、そうかなって。雰囲気とかも商社マンっぽいし。皆さん年齢的に寮を出てますよね?一人暮らし大変じゃないですか?そろそろ駐在の話も?」
素直に納得している男性たちを横目に、「Facebookで検索したんでしょ」と真理子は心の中で呟く。
そして、彼らに結婚願望があるか読み取ろうとしているこの質問はきっと、商社マンとの会話の定型文なのだろう。
「そうだね、寮を出た途端今まで必要なかった家賃が発生するし、良いとこ住みたいしね。でも咲ちゃん商社について詳しいんだね。さては商社マンとばかり飲んでるんじゃないの〜咲ちゃん美人だし男受け良さそうだもんね」
幹事の男は冗談交じりにそう言ったが、意外にも積極的な咲の態度に少し驚いているようだった。
「そんな事ないですよ〜!」
咲は顔の前で手を振り、恐縮した態度を取りながらも会話を続けた。
「やっぱり駐在があると、海外に行く前に彼女と結婚とかって考えるんですか?向こうに何年か行っちゃうと日本人との出会いも限られますもんね。あ、でも向こうで駐在さん同士の飲み会とかあるから楽しそう!でも駐在に連れて行くなら英語が出来る女性が良いですよね。学生の頃、留学しておいて良かった〜なんて〜!」
「はは…そうだね、やっぱり柔軟性がある子が良いかなあ…でもあれだな、普段から頻繁に飲み歩いている子だと色々と心配になっちゃうよね」
幹事の男はそう優しく答えたが、咲の止まらぬ会話と自己顕示欲の高さに呆気に取られているようだった。
そんな様子を、真理子は慣れたように見ていたが、後輩二人と男性陣は互いに目を合わせながら苦笑いし、気まずさを誤魔化すようにグラスに残ったシャンパンを飲み干した。
男性たちの笑顔は、すでに引きつっている。
彼らだって、自分たちの市場価値の高さは実感しているはずだ。商社マンが好きな女は、東京にはゴマンといるのだから。
そんな女たちが何を求めているのか、彼らだって気づいている。「商社マン」という肩書しか見ていない、と。
きっと、自分の年収がいくらくらいかも握られている、と彼らはウンザリしているだろう。
商社マンを知りすぎた女。
せめて最初だけでも知らないフリをすればいいものを、咲は素直であるがゆえにこうして自らチャンスの芽を踏みつぶす。
「あ、もう一杯くださ〜い!」
咲は、大きな声で言うとくるりと振り返り、「お仕事のこと、もっと聞かせてください♡」と可愛らしく首を傾げた。だが咲が今後、この中の誰かと二人で食事にいくことはないだろう。
こうして、彼女の人生で食事会の回数だけが増えていく。
咲が社内で“食事会の女王”と皮肉交じりに言われるのも、彼女の行動と言動からして仕方ないことだ。
そのあだ名を付けたのは彼女の引き立て役にしかならない真理子なのだが。
▶NEXT:7月6日 金曜更新予定
マブダチすぎる両親と実家に住んでいるモンスターを紹介。
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
この記事で紹介したお店
ガーブ東京
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この度は、皆様に大変ご迷惑をお掛けする状況となりましたことを、深くお詫び申し上げます。
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