デートにも接待にも喜ばれること請け合い。秋の到来を、目と舌で感じ味わう和食
皿の上に現れたるは、美しい秋の景色。誰もがうっとり見とれてしまうに違いないこのひと皿がいただけるのが、銀座の和食店『杉もと』だ。
旬の美味しい食材をこれでもかと盛り込まれた料理は、その日の仕入れによって内容が決まるおまかせコースでいただこう。2万円と、1万3千円のおまかせコースがある。内容は旬によって変わるのでお問い合わせを。
たとえばこちらの前菜なら、11月から市場に出始める歯触りのよい「寒うど」を、とろりと甘い柿と鳥貝と合わせ胡麻白酢で和えた1品や、旬の慈姑(くわい)を松笠に見立てた1品、新銀杏や新そばなど、秋の味覚が満載だ。
和食店ながら、リムの文様が美しい「ノリタケ」の洋皿で提供されるプレゼンテーションも心憎い。
ひと皿ごとが記憶に刻まれる、“変化球”的驚きを楽しむ
コース料理の中でも、より『杉もと』らしさが表れる料理が「スープ」だろう。通常和食店で提供されるのは、出汁で仕立てた“吸い地”に“碗種”が入る「汁物」。これをあえて「スープ」としたのは、「より自由な発想で汁物を提供したい」という店主・杉本修一氏の考えからだ。
この日は、「鼈(すっぽん)のスープ仕立て 原木椎茸 ポロ葱のエスプーマ」。ポロ葱の自然な甘さを感じられるなめらかなエスプーマの下には、すっぽん、鰹節、昆布で丁寧に引かれた出汁をベースにしたスープが隠されている。
エスプーマという方法も、杉本氏が多用する“変化球”のひとつ。「旬を大切にする日本料理、京料理ですが、だいたいどの店もその時期使う食材が同じで、料理が似通ってしまうものです。私がやりたいのは、もっと自由な和食。季節感や出汁など和食の王道は外さずに、フレンチやイタリアン、中国料理の技法を取り入れて変化を出しています」。
従来の和食にない食感や質感が開く、新たな和食の扉
次に提供された進肴「仙台牛もも肉タタキ 赤パプリカ醤油のジュレ」も、醤油ベースのジュレを凍らせ、ソルベ状にしてタタキ肉に添えるという変化球が。まだほんのりと温かい肉とさっと溶ける冷たいソルベが、口の中で絶妙に絡み合う。
エスプーマも凍らせたジュレも、オーセンティックな和食にはない多彩な食感やテクスチャーが、味わいの幅を増幅させる。そうした効果で食べ手の新たな和食の世界を開くことが、杉本氏の変化球の狙いなのだ。
「一般的な和食に飽きてしまったら、ぜひうちの料理を食べてみてほしい」と杉本氏。むしろ和食に精通する人こそ、存分に楽しめる料理だといえるだろう。