銀座に移転した今だからこそ提供できるこだわりの食材も
前述の仙台牛は、『杉もと』が特に力を入れる食材。「どこか優しさを感じられるお肉です。脂の融点が低くさらりとしているので、重さがありません。生産現場もとてもきれいで、牛がストレスなく育っているのが見て分かるんですよ」と杉本氏。
この仙台牛、麻布時代から注目していた食材だったものの、以前の店ではキャパや設備の都合上取り扱いが難しかったのだという。席数を大幅に増やし、厨房施設も充実させた銀座で、晴れて店いちおしの食材と相成ったのだ。
実は銀座への移転も、満を持しての展開だったと杉本氏は話す。「いつかは、という思いがありました。長年麻布で営業するうち、常連のお客さまの年齢が上がるとともに、遊び場所も麻布から銀座へと変化した。それでうちも、このタイミングで銀座へ店を出そうと」。
コースと豊富なアラカルトを組み合わせて。自由度の高い料理構成も魅力
『杉もと』らしさを満喫できるのは、何より前述の「おまかせコース」であることに違いはないが、うれしいのは自分の気分や腹具合に合わせて、アラカルトを組み合わせられることだ。
「ほとんどの店のコースは、締めのご飯なり麺なりがセットだと思いますが、ご飯で締めるより、おつまみと一緒にお酒を飲みたい人もいるはず。実際、五品コースとおつまみを数品を頼まれる方も多いですよ」と杉本氏。
メニューを見れば、見るからに酒が進みそうなアテ系からしっかり系のものまで、30品以上の単品料理が。酒好きを自称する杉本氏だけあって、飲ん兵衛の気持ちを実に巧みにくすぐるラインナップだ。これほどの品数も、移転後、店の規模を大きくしたことで実現できた。以前の『杉もと』とは、格段にパワーアップしているのがもうお分かりだろう。
レアものの日本酒がずらり。片っ端から制覇したくなる日本酒リストもあり!
さて、『杉もと』で忘れていはいけないのが日本酒の存在だ。こだわりの酒造りで知られる秋田・齋彌酒造の「雪の芽舎」は、酒の味と杜氏の信念に惚れ込んだ杉本氏自ら熱烈にラブコールを送り、オリジナルラベルの限定酒を別注。
また福島の「会津錦」という小規模の蔵で醸される「Q[ku]」は、杉本氏自身が企画から関わって造られた酒で、地元の「天のつぶ」という品種の米を使用した珍しいものだ。氏曰く「まるでご飯を炊いたときの湯気のような香りと、いい米をゆっくり噛み締めたときのような自然な甘みがある酒」。
冷酒の提供は、最大限にアロマを感じられる設計のオーストリア製「ガブリエルグラス」で。どの酒も『杉もと』の料理に合うことを前提にセレクトされ、食事のひとときをより味わい深いものにしてくれる。料理に酒に、秋の食欲を心地よく満たせる『杉もと』こそ、今行きたい珠玉の1軒といえるだろう。
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