住んでいるだけじゃダメなの?麻布十番在住の代理店マンが陥った十番の落とし穴って?

自然体が、カッコイイ。粋な男の十番の遊び方


前はどこか必死な感じがして、無理して虚勢を張っている感が否めなかった淳平君。

それなのに、今日はどことなしか男らしく見える。

ニットジャケットの下は白のTシャツというシンプルな装い。それなのに、不意に見せる大人の表情に思わずどきりとする。

「恥ずかしい話ですが、あれから十番を勉強したんです。本当の粋ってなんだろうか、と考えながら」

そう、この間『NISSIN』でも感じたことだが、淳平君はこの街をいつの間にか“麻布十番”ではなく“十番”と呼ぶようになっている。

「近所に、雰囲気の良いバーを見つけたんです。マスターがひとりでやってる店なんですが、そこの常連さんたちがカッコイイ人たちばかりで。少しでもその輪に入りたくて通っているうちに、”十番のイロハ“を教えてくれる人と仲良くなったんですよ」

――十番のイロハ…。

元彼と同じセリフを言う人がいることに驚きながら、ワインを飲みつつ淳平君の横顔を盗み見る。

「その人から、十番の粋な飲み方や遊び方を教えてもらったんです。店はもちろんのこと、立ち居振る舞いとかね。そして“気を抜きすぎず、でも自然体でカッコ良く遊べ”と教わりました」

ふと元彼の言葉を鮮明に思い出した。

――そうだ、十番の粋…。

「肩肘張らずに、地元感覚で遊ぶ。それが十番の粋なんだ」と彼は言っていた。

常連同士で仲良くなる文化のあるこの街では、いかに顔見知りがいるかで遊べる範囲が変わってくる。


一見ただの雑居ビル。その2階に入る看板のない会員制バーに、マスターがひとりでやっている地下の店。

いつ行っても必ず誰かしら知り合いがいる立ち飲み屋に、常連さんの名前を全員覚えている女将が割烹着姿で立っている和食屋さん。

ハレの日に使いたいフレンチに、イタリアン。

この街には店の数だけストーリーがあり、そしてそこに集う人たちにも様々なストーリーがある。

一見閉ざされたコミュニティーで、お洒落な男女が集う街として見えるかもしれない。でも一歩足を踏み入れてみると、人情味があり、東京の中でもここでしか味わえない独特の世界が広がっている。

何よりも暖かくて、優しい街。

それが、麻布十番なのだ。

「玲奈さん、もう一軒行きませんか? とっておきの店を見つけて…。次は玲奈さんと一緒に行きたいなと、ずっと考えていたんです」

その店は、二の橋の近くにある知る人ぞ知る店だった。

「もうすっかり、十番住民だね」

店を出てふと上を見上げると、商店街の先に『六本木ヒルズ』が煌々とそびえ立っている。

「玲奈さんの知らない十番を、見せたいんです。これからも、色々な店へ一緒に行っていただけますか?」

振り向きざまに笑顔で手を差し伸べてきた淳平君の手を、そっと握り返す。

彼となら、また新しい魅力を見つけられる気がする。

懲りずに履いてきたピンヒールが石畳に挟まらないように注意しながら、もう一度、私は彼の大きくて温かい手をぎゅっと握りしめた。

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