解説1:2対2での席。”明らさま”な男は嫌われる
「ちなみに名前は?僕は俊明って言います。こっちは同僚の弘人です!」
声をかけてきた俊明と弘人は、対照的だった。
明るい俊明はよく話すお調子者で、弘人は静かに話を聞くタイプと言えるだろう。
「私はリナで、こっちは沙奈です。お二人は、どうしてここに?」
「会社が丸の内なんだけど、あっちは知り合いだらけだから。会社の人とかにも会いたくないしね」
「へぇ。じゃあ俊明さんは丸の内に勤めるエリートなんだ。こんな所で女性引っ掛けている場合じゃないですよ(笑)」
「そういうリナちゃんこそ。どうしてこんな美人が金曜の夜に女二人でいるの?世の中の男は見る目がないね〜」
自然と、俊明と私、弘人と沙奈というふた組に会話が別れ始めていた。
弘人たちは静かに話しているが、俊明は酔いが回ってきたのか、饒舌になって一人で話している。
「リナちゃん可愛いから、彼氏何人もいそうだよね」
—初対面の人に、なんでこんなこと言われないといけないんだろう...。
よく知らない人に、こんなことを言われる筋合いもなければ、決めつけられる意味もわからない。
かと思ったら今度は、スタイルが良いだのネイルが可愛いだの褒め殺し。私は、俊明の“女性に対して言う決まり文句”のようなものにも、段々嫌気が差してきた。
そして一番気になったのは、さっきから私の方ばかりに話しかけていることだ。
せっかく4人で飲んでいるのに、沙奈には見向きもせず、これではまるで無視しているようなもの。
—私の友達なんだから、沙奈にももっと話しかけるべきでは?
そう思い、俊明にさりげなく4人でできるような会話を促してみる。しかし俊明はやっぱり皆で話そうとせず、私の方ばかりを向いていた。
そんな時に俊明は、“この人はちょっと...”と女性が呆れてしまうことをしてきたのだ。
「俺さ、手相見られるんだよね」
その時点で、私の中で“終了”の合図が鳴った。
食事会の席でも、結構な頻度で“手相おじさん”は現れる。
さらには手の大きさ比較を口実に手に触れてこようとする男性も、少なからずある一定数の割合でいる。
女性からすると、そういったベタな手口をされると少し引いてしまう。
それに、初対面で誰にでも触れられたいわけがない。回りくどい上にカッコ良くもない手法で手を合わせようとされるとますます引いてしまうのだ。
「さっきから気になっていたんだけど、リナちゃんって手小さくない!?ほら、僕の方が第一関節分大きいもん」
そう言って、自分の手と私の手を重ねあわせる俊明。
—こういうタイプが一番面倒なのよね...。
そう思いながらも顔には出さず、笑顔で俊明の相手をし続けたのだった。
この記事へのコメント
昨日のコメントでズバリ正解だった方いましたね
正解者に拍手
と思いきや、周囲に良い男いるかもって理由でLINE来ただけかい