東京戦略時代 Vol.1

東京戦略時代:オンライン会議のカメラの前で…。異例の出世を遂げた魔性の女の”武器”

職場は、戦場だ。

出世争い、泥沼不倫、女同士の戦い…。

繰り広げられる日常は、嘘や打算にまみれているかもしれない。

そんな戦場でしたたかに生きる「デキる人」たち。

彼らが強い理由は、十人十色の“勝ち残り戦略”だった。

大手IT会社に勤務する25歳の花山 樹里は、そんな上司・同僚・後輩と関わりながら、それぞれの戦略を学んでいく…。

「もう15時10分になったけど、まだかしら…」

はあ、とため息をつきながら、花山樹里はスタジオをぐるりと見渡す。

今日は樹里が担当する新サービスのPRムービー撮影日。

15時頃には顔を出すと言っていた樹里の上司・紗栄子の姿は、まだ見えなかった。

撮影時間は、ただでさえタイトだ。開始の15時を過ぎても開始を引き伸ばされているスタッフ達からは、苛立ちが感じとれる。

ーどうしよう…自信ないけど、1人で進めるしかないよね。私の案件だし…でも…

初めての撮影現場を上手く回せる自信のない樹里は、学生時代から気に入って着ているワイドパンツをぎゅっと握りしめる、

しかし、その時。

背後からフワッとエルメスの香水の香りがし、樹里の肩がそっと叩かれた。

「花山さん、お待たせ!」

振り返ると、紗栄子が首を傾げながらニコっと笑っている。

隙のないメイクと、上質で秋らしいニットアンサンブル。ネイルには上品なベージュカラーが施され、そして何より、魅力的な笑顔が輝いていた。

同性ですらドキっとしてしまう仕草を前に樹里は、咄嗟に笑みをつくりながら「お疲れさまです」と口にする。

紗栄子の色気と愛嬌の絶妙なコンビネーションは、周囲の人間をいつのまにかメロメロにしてしまう。

遅刻してきたにも関わらず紗栄子が登場したことで、現場の空気が一瞬にして和やかさを取り戻してしまうのは、さすがと言うしかなかった。

女性らしさが溢れる紗栄子の前で、樹里は自分の服装があまりに中性的すぎたことに多少の居心地の悪さを感じながらも、ホッとした声を漏らす。

「あの、紗栄子さん…」

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