―あの子と私。一体どっちが、女として賢いの...?
聡子は、外資系広告代理店で働く27歳。
周囲が海外経験者ばかりの中、唯一独学で英語をマスターし、意気揚々とキャリアに邁進している。激務も順調にこなし、充実した日々を送る彼女だがー。
頭の隅では、恋愛や婚活に重きを置き、要領よく人生を謳歌する“ゆるふわOL”に小さな嫉妬を抱いていた。
久しく恋愛から遠のいていた聡子は、忘れられない元彼・陽介に偶然再会するも、彼には結婚間近の恋人がいることが判明。そんな中、陽介の同僚・ワタルとの距離が縮まると同時に、陽介からも甘い言葉を囁かれ...?
「知美...なんで...」
突如バーに現れた恋人・知美の姿を目にして、陽介はすっかり狼狽えていた。聡子はそんな彼の姿を見ていられず、すかさずフォローを入れる。
「あ、あの!私は大学時代からの友人で、聡子と申します。これは、仕事の付き合いでたまたま...」
「分かってます」
すると知美は、聡子の言葉を遮り、ニッコリと微笑んだ。女でもドキッとするような可憐な笑顔に、聡子は思わず怯んでしまう。その表情に、彼女の圧倒的余裕とモテ力が垣間見えたような気がした。
「私、彼のことは信用してるので大丈夫です。それに...聡子さんを見たら、仕事ってことくらい私にだって分かりますよ」
知美は、スーツ姿の聡子の全身を上から下まで見るようにして言った。聡子のいかにもキャリアウーマン風ファッションから、デートではないと判断したようだ。
そういう知美は、今日も聡子とはまるで対照的なふんわりしたファッションに身を包んでいる。
そして彼女が「ね、陽ちゃん」と可愛らしい声で笑うと、場の空気はたちまち和み、陽介は安堵したように元の穏やかな表情に戻った。
聡子は修羅場を避けられたことに胸を撫で下ろしつつも、全くライバル視すらされない自分が情けなく思えたのだった。