―あの子と私。一体どっちが、女として賢いの...?
聡子は、外資系広告代理店で働く27歳。
周囲が海外経験者ばかりの中、唯一独学で英語をマスターし、意気揚々とキャリアに邁進している。激務も順調にこなし、充実した日々を送る彼女だがー。
頭の隅では、恋愛や婚活に重きを置き、要領よく人生を謳歌する“ゆるふわOL”に小さな嫉妬を抱いていた。
久しく恋愛から遠のいていた聡子は、忘れられない元彼・陽介に偶然再会するが...?
「陽介さん、絶対に聡子さんに未練がありますよ。打合せの時もずーっと聡子さんを意識してましたもん。私には分かります!」
後輩の志帆が、目を輝かせて聡子に熱弁を振るう。
忘れられない元彼・陽介と奇跡的な再会を果たした打合せ。そのあとも、聡子は志帆に彼との過去や思いを打ち明けていた。
「そうかな...」
念願の再会。しかも食事にまで誘われ、聡子はすっかり舞い上がっていた。
しかし陽介がその後、「志帆や自分の同僚も誘って食事会でも」と付け加えたため、2人きりではなかったことに、今度はひどく落胆してしまったのだ。
「未練がなきゃ、プライベートの食事なんて誘いませんって。元カノといきなりデートじゃ気まずいから、わざと“食事会”なんて言ったんだと思います」
「うーん、でも...」
「きっと彼、“デキる女”になった聡子さんを目の当たりにして、逃がした魚は大き過ぎた!なんて思って恐縮したんですよ。そもそも仕事で偶然再会するなんて、運命かもしれませんよ」
志帆の熱い言葉に、落ち込んだ気持ちが徐々に回復していく。
たしかに、学生時代からかなりの成長を遂げたという自信はある。志帆の言う通り、陽介は自分を見直してくれたかもしれない。
―本当に、運命なのかも...。
ここしばらく仕事にばかりバリバリ精力を注いでいた聡子であったが、その胸は、久しぶりに少女のようにときめき始めた。