流行の発信地である東京。
日々、新しいショップやレストランがオープンし、アップデートを繰り返す街。
東京で、そのすべてを楽しみつくそうとする女を、時として人は「ミーハー女」と呼ぶ。
ミーハー女で何が悪い?
そう開き直れる女こそ、東京という街を楽しめるのだ。
PR会社に勤務するミハル(27歳)も、最新のものをこよなく愛する「ミーハー女」である。
ただミハルの場合は、恋愛においてもミーハーであり、それが人生を少しだけハードモードにしていたのだ。
ミーハー女・ミハルは、この東京でどう成長していくのか?その物語をお届けしよう。
「今日の食事会、誰がくるんだっけ?」
「大学から友達の商社マン一人と、あとは7年目の先輩が一人、10年目が二人だって」
「10年目かぁ。ちょっと気使わなきゃいけないし、面倒だなぁ」
待ち合わせ場所である六本木ヒルズのお手洗いで化粧を直し、ミハルは同期のユリナと夜の街に繰り出した。
金曜20時、西麻布。
ここで華金を過ごすのは、何回目だろう。
「ミハルです。PR会社で働いてます。社会人5年目です!」
「みんな可愛い〜しかもPR会社とかキラキラ女子じゃん!」
到着したレストラン。いつものごとく、男性陣のテンションは最高潮だ。
ミハルの友人たちは皆、お酒が強くて、顔も可愛い。特に今夜のメンバーは、PR会社で働いているから機転も利くし、ノリも良い。このメンバーの食事会で、お金を払うなんてありえない。
ー可愛いは、やっぱり正義だ。
合コン相手の中で、大学からの友人である直樹がミハルの話を掘り下げる。
「PR会社かぁ、最近話題のものとか教えてよ!」
「あ、そういえば実写版の『アラジン』、仕事が忙しくて実はまだ見られてなくて…」
ミハルの発言に、男性陣が食い気味に声をあげる。
「お、良いね!じゃあ俺と『アラジン』観に行こう!」
「え〜抜け駆けずるい!俺も行きたい!」
そんな会話で場がひとしきり盛り上がってきた頃、隣に座っていた直樹が耳元で囁いてきた。
「ミハルちゃんって本当に可愛いよね。めちゃくちゃタイプ。『アラジン』俺と行こうよ」
ー狙い通り。
直樹の誘いを聞いた瞬間、ミハルは隠すことなく満面の笑みを浮かべた。
顔が可愛くてノリも良いから、ちょっと目配せをすれば、男なんて簡単に落とせる。
また会いたい、と思わせることなんて、ミハルにとっては簡単なことだと思っていた。
この数日後、直樹からのありえない仕打ちを受けるまでは…。
この記事へのコメント