―あの子と私。一体どっちが、女として賢いの...?
聡子は、外資系広告代理店で働く27歳。
周囲が海外経験者ばかりの中、唯一独学で英語をマスターし、意気揚々とキャリアに邁進している。激務も順調にこなし、充実した日々を送る彼女だがー。
頭の隅では、恋愛や婚活に重きを置き、要領よく人生を謳歌する“ゆるふわOL”に小さな嫉妬を抱いていた。
久しく恋愛から遠のいていた聡子は、忘れられない元彼・陽介に偶然再会するも、彼には結婚間近の恋人がいることが判明した。
「コレ、コレですよ!陽介さんの彼女の知美って子。やっぱり典型的な“ゆるふわOL”でしたね」
ランチの席に着くなり、志帆は身を乗り出して聡子にスマホを見せた。そこには、なんと知美のInstagramのアカウントが表示されている。
志帆には知美と同じ総合商社勤務の友人がいるそうで、先日の食事会のあと、彼女についてリサーチしたらしいのだ。
―この子が、陽介の彼女...。
女の目から見ても、知美はたしかに可愛かった。
真っ白な肌に、大きな瞳、柔らかそうな栗色の巻き髪。雰囲気で誤魔化すわけでもなく、彼女は顔立ちも美しく整っている。
手料理やフラワーアレンジメントなどの華やかな写真を見る限り、聡子とはライフスタイルもかけ離れているようだ。
―やっぱり陽介が好きなのは、こういう子よね...。
悔しいが、写真を見るだけでも、知美の愛らしい小動物のような立ち振る舞いが想像できてしまう。
自分とは正反対の女の姿を目の当たりにし、すっかりショックを受けて塞ぎ込んでいると、聡子のスマホがLINEの通知を知らせた。
―聡子ちゃん、近々食事でもどうですか。今度は二人で―。
その意外な送り主はなんと、陽介の同僚・ワタルだった。