B:3ヶ月焦らした女・留衣
最初に出会ったのは、留衣の方だった。
食事会で出会った留衣は黒髪が印象的な美人で、ゆったりとした話口調が色っぽい。そんな彼女に、僕はとても興味を持った。
聞けば彼女は、白金高輪に住んでいるという。帰りの方向が同じという口実で、一緒のタクシーに乗り込んだ。
「白金高輪で好きなお店とかある?この界隈、隠れ家的なお店が多くていいよね」
「そうなんですよ。『タランテッラ ダ ルイジ』とか『茶懐石鮨』とか好きかなぁ。でも目黒にも美味しいお店多いですよね!私、この前初めてメグロードへ行ったんですけど...」
こんな美女がメグロードに入ることが意外で、僕は思わず笑ってしまった。そしてもっと彼女のことを知りたくなった。
ここで誘わないバカはいないだろう。自然な流れで、僕は“今度一緒に食事しよう”と、留衣をデートに誘うことに成功したのだ。
そしてその日から、僕たちは毎日のようにLINEを送りあうほどの仲になっていった。
留衣と3回目のデートをした時に、僕はちょっと勇気を出して聞いてみた。
「この後どうしようか...家、来る?」
このセリフを切り出すとき、何度言っても、何歳になっても、言い慣れないのは僕だけなのだろうか。妙に緊張したのだが、彼女の答えはあっさりとしていた。
「どうしようかな...また今度、お邪魔させてください」
いわゆる、玉砕である。
誘ったものの、フラれる悲しさ。僕はショックで一瞬その場にへたりそうになるが、留衣の次のセリフで持ち直した。
「大毅さん、ごめんね。もう少し、ちゃんとした関係になってからがいいなと思って...待っていてくれる?」
「もちろん。留衣ちゃんのこと、僕も真剣に考えているから、そんなことで嫌いになったりしないし、焦ってもいないよ」
その言葉通り、僕からはもう手を出さないと決めた。向こうのタイミングがあるのかもしれないし、本当にそれが目的ではなかったから。
一緒にいられれば楽しかったし、会えるだけでも嬉しかった。何度か食事へ行くうちにお互いのこともよく知ることができて、彼女の人間性も見えてきた。
留衣の性格の良さも十分理解でき、お互いの仕事のことなどをLINEで話す毎日が続いている。
しかし1ヶ月が経った頃から、彼女と会うたびに僕の思いはくすぶり始めていた。
—そろそろOKをくれても良いのでは...?
まるで目の前にニンジンをぶら下げられた馬のように、僕は“待て”をさせられている。
そしてそこから1ヶ月経っても2ヶ月経っても、留衣からの許しが出ることはなかった。
この記事へのコメント
女に言わせてやらせてる、チキンでカスな男だよねこれ
出会った順番逆だったらどうだったんだろう?
単に新規の方が新鮮だからじゃない?