「実は最近俺もデートした子がいるんだけど、その時行ったお店がさあ…」
やはり、今の春菜にこれ以上ダメ出しするのはやめておこうと思い、龍平は話題を変えることにした。
「へえ、デートであのお店に行ったんだ?私も何度か行ったことあるけど、その時行った彼は私のことが大好きでね。そういえばあの彼も、もう結婚しちゃったらしいのよね」
「あ、そうなんだ。いや俺もさ、あのお店行ってみたかったから…」
「え、龍平、あそこ行ったことなかったんだ?でも私だったら、最初のデートはもっとスペシャル感が欲しいなあ。そうだ、スペシャル感といえばさぁ…」
それから約5分、龍平は春菜の話に耳を傾けた。
決定的に春菜に欠けているもの...
「ちょっと龍平、急に黙っちゃったけど、何なのよ。私の婚活を真剣に応援してくれてるなら、アドバイスくれてもいいでしょ!」
「え...ハッキリ言っても平気なの?」
「もちろん」
彼女に決定的に欠けているもの。
それは、サービス精神だ。
春菜はさっきからキーンと耳に鳴り響くような甲高い声で自分の話ばかりして、全く人の話に耳を貸さない。
“俺が、俺が”と自分のことばかり話し、自慢する男を「オレガー」なんて呼ぶ言葉が巷では流行っているようだが、言うならば彼女は「ワタシ姫」である。
本人は人の話を聞いているつもりだが、話を途中で遮り自分の話にすり替える。
女性がお喋りなのは仕方のないことだけれども、たまには男だって話を聞いてほしいときがある。もしくは、一人で静かな時間を楽しみたい時もある。
そんなことお構いなしとばかりに、“私はね、私がね”と毎回自分の話ばかりされたら疲れてしまう。
おそらくデート中もこの調子だったのだろう。タチの悪いことに春菜はさらに、結婚願望が強いと感じさせてしまった。
そんな彼女を鑑みて、男性は“この人と付き合ったら面倒くさそうだ”と何かのレーダーが自然と働いたのだろう。
「私は協調性があるから、そんな自分の話ばかりしないわよ」
春菜はプリプリと息巻いているが、残念ながらこれが、ネブミ男・龍平の見立てだ。
未婚の龍平が偉そうに言える立場ではない。それは百も承知の上だ。ただ、何かの役に立てれば良いと思っているだけ。
ー彼女を包み込んでくれるような、優しい男を探せばいいのになぁ...
そんなことを思いながら、龍平は一人、またちびりとウィスキーをすすった。
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この記事へのコメント
違う話になってしまっているから、結局自分が言いたいことが言えなくて悶々とするけど、わざわざ話を元に戻してまでいう気にならない。
もういっか…って。