神楽坂を美食の街たらしめているのは、店の多さだけでなく、そのクオリティが圧倒的に高いから。
和食において、いま注目を集めているのが、本多横丁沿いのビルの4階にオープンした『蓮』だ。
あの『石かわ』グループの3店舗目として、2009年にオープン。その後、わずか30歳で料理長に就任した三科料理長(現在は34歳)が腕を振るう。
日本料理の最前線に同年代の店主がいる。神楽坂の今を感じる名店
『蓮』
同年代の活躍は、どんなスターの存在よりも刺激になるもの。だからこそ、日本料理の最前線で、店を任されている料理長が同年代というのは、ただ背伸びして料理を楽しむだけではない、刺激をもらえる。
ここ『蓮』で腕を振るう三科 惇氏は34歳。2つ上の先輩が、この星付き店を取り仕切る姿は、食べ手に大いに刺激を与えるはずだ。
三科氏は、幼少期から食の道を夢み、邁進してきた。『石かわ』グループの〝末っ子〞であり、師匠の店は、いずれも目と鼻の先。プレッシャーはないか?という問いには「むしろ、末っ子の特権で〝何でもアリ〞にしていただいています」と微笑む。
吟味した上質な素材の魅力をストレートに味わってもらいたい、という思いがみなぎる料理からは、当然師匠のDNAが強く感じられるが、若々しさも相まって、より直球な印象を受ける。
コースの中に、必ず「炭焼き」を設けているのも、その表れか。
これまで、長年厨房の「煮方」を任されていた三科氏は、カウンターに入るよりも火の前に立つ時間が長かった。そのため、料理長に就任しカウンターに立つこととなった際、「炭焼き」を選んだ。
眼前で仕上げるということは、食材の良し悪しや己の技量をさらけ出すこと。若き料理長の決意表明たる一品、である。
この日は、常連さんの人気も高い、軽く湯がいた鹿児島産の筍を、七輪で丁寧に。カウンターじゅうに漂う匂いも、ご馳走!
カウンターといえば、檜の1枚板を使っている点も、この店の清々しさに一役買っている。
また、師匠らとの違いに触れるならば、両者は食事には炊き込みご飯を用意することが多いのだが、『蓮』では、白いご飯が基本。
そういえば、屋号の由来を問うと「蓮は、清廉潔白の象徴である花と言われているので、とにかく潔く清らかな料理を心がけています」と、三科氏。
白いご飯にも、そんな姿勢が込められているのだろう。
最後に、同世代が日本料理を楽しむためのアドバイスを求めると……、「うちはお客様との距離も近く、気取らない雰囲気。とにかく僕らに委ねて下さい」。
王道の和食に邁進する姿は、大いに刺激となり、人生を見つめ直すきっかけにもなりえる。
同年代同士、互いに切磋琢磨できるライバルとして、長い付き合いが始まるだろう。
まだ神楽坂が残っていた!32歳からはこの街で大人の階段を上る
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