2018.01.28
パーフェクト・カップル Vol.1誰もがインターネットやSNSで監視され、さらされてしまうこの時代。
特に有名人たちは、憧れの眼差しで注目される代わりに、些細な失敗でバッシングされ、その立場をほんの一瞬で失うこともある。
世間から「パーフェクト・カップル」と呼ばれている隼人と怜子は、一挙一動が話題になり「理想の夫婦」ランキングの常連として、幸せに暮らしていたが…。
結婚6年目。「世間の目」に囚われ、「理想の夫婦」を演じ続ける「偽りのパーフェクト・カップル」の行く末とは?
「試しに、キスしてみない?」
テキーラで有名な恵比寿のバー。常連だけが予約できる個室のソファー席で、私がそう言った相手は、10年来の親友と言うべき男友達の堀河隼人(ほりかわはやと)だった。
葉巻をくわえていた彼が、私の言葉にむせて笑いだす。その笑い声に一瞬怯みそうになったけれど、私は何とか笑顔を作ると、精一杯軽い口調で言った。
「で、もしキスできたら、結婚しない?」
「怜子、お前何言ってんの?今日そんなに飲んだっけ?」
笑いながら私を酔っ払い扱いする、呆れたような声さえ心地良く聞こえるのは、彼の職業柄だろう。
―爽やかなのにセクシーな声、か…。
世間でそう言われている隼人の声は、今、全国の主婦層を虜にしているらしい。スポーツの取材を得意とするキー局のアナウンサーだ。
高校、大学とアメフトで活躍した長身の体に、さわやかな甘い顔立ち。体当たりの取材スタイルで好感度を上げ、好きなアナウンサーランキングでは常にトップ3を争っている。
今年28歳になった私達は、大学の同級生。
1年生の時に、お互い友達の推薦でミスターとミスに選ばれると、何かと同じイベントに駆り出されるようになり、ある日、隼人が私に言った。
「俺たちって似てない?」
それは私も感じていた。2人とも社交的だと思われているけれど、本当は大勢でいるのは苦手。周囲が思っている程自分に自信があるわけでは無く、本当は小心者。その癖、弱さを人に見せることができない。
そして上昇志向が強く、常に将来の目的を見据えて動く。ミスター・ミスコンテストに出たのもそのためだった。
「野心あります、って感じの子の方が信用できるんだよね、俺。」
彼の言葉に一瞬戸惑った私を、隼人が笑い、私もつられて笑った。それ以来、私達は2人で会い、語りあう事が多くなり、時には恋人にも言えないダークな部分さえさらけ出した。
そして、私達はいつのまにか、秘密を共有することのできる「親友」になった。それは決して「恋」になることは無い。その距離感が、お互い心地良かった。
在学中にモデルにスカウトされたとき、私は隼人に相談し学業を優先させ、事務所には卒業まで待ってもらう事にした。そして卒業した後、人気女性誌でデビューすることができた。
隼人が在京キー局のアナウンサー試験に全て受かった時は、「怜子の勘を信じる」と言って、最終的に私が勧めた局を選んだ。
そんな風に10年以上支え合ってきた親友に、今、突然「キス」を持ちかけるなんて、自分でもおかしくて驚いている。でも…
私達には、「正気を失う程」の出来事が起こってしまった。
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