ピンセットや眼前のプレゼンテーションなど、まさに体験型!
「体験は、僕たちにとって大切なキーワード」と薮中シェフが言うように、ゲストを中央のカウンターに集わせ、調理の工程を目前で見せたり、ピンセットを使ったりと縦横無尽。
そんな中、登場したのは煙を蓄えたガラス瓶。自家製の生ハムと金柑の色合いが美しい鴨のサラダだ。
蓋をあけた瞬間、香ばしい薫香が鼻孔を柔らかくくすぐる。
異なる風味にテクスチャー。蜜漬け金柑の甘みや、3か月熟成させた鴨の生ハムの塩気、白ワインビネガーで漬けた紅芯大根の酸味が融和し、味覚の豊かさを感じさせてくれる。
かと思いきや、白眉は牛蒡のカプチーノ。土の大らかさを感じさせるふくよかな味わいは色っぽく、顔が火照る。こういった緩急の付け方も薮中シェフの真骨頂と言えるだろう。
同じ時間に、同じ料理を体験するというのは、そこに一体感が生まれてくるもの。コースはクライマックスへ。
メインに登場したのは、和牛。富士山の薪で香りをつけた肉はキメが細かく、上品な脂をコーティングするような薪の香りが心地良い。柔らかな肉質に思わず笑みがこぼれる。
〆は、緑が美しいバジルのリゾット。バジル、魚の出汁、チーズで優しく仕上げた味わいにクールダウン。まるで、一本の映画を観たような満足感がある。
エンドロールは、液体窒素で固めたミルクのアイスクリーム。そして、終幕。
レストランでありながら、五感や味覚を揺さぶられる体験は唯一無二。神楽坂に生まれた薮中劇場を、ぜひその目で、その感性で体験して欲しい。
Photos/Daisuke Yamada, Text/Keiko Kodera
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