2018.01.10
残念極まる男 Vol.1タカシのInstagram
大満足だったデート帰りの、タクシーの中。瑠璃子は早速タカシにお礼LINEを送りながら、気がついたことがあった。
—あれ?タカシさん、LINEのアイコン変えた…?しかも、自撮りのどアップだ…。
気を取り直してメッセージを送る。そのあと、先ほどアカウントを教えてもらったタカシのInstagramを開いた。しかし、見た途端にぎょっとした。
その投稿のほとんどが、顔面どアップの自撮り写真なのだ。
—出勤前に10km走ってきた!最高!
—ゴールドジムなう
文章とはさほど関係のない、顔面中心のセルフィーがひたすら続いている。さらに瑠璃子は、最新投稿を見てど肝を抜かした。
—いわ倉さんでシャンパーニュ #しゅわしゅわ #bubbles #いわ倉
それは先ほど一緒に行ったばかりの店へのチェックインで、写真はやはり、シャンパングラスを片手に持ったアップの自撮りピン画像だった。
—いつの間に!?私が化粧室に外してる間に、撮ったのかしら…。
大の男の自撮り写真に、瑠璃子は控えめに言ってもドン引きした。
そしてその瞬間、あることを思い出した。化粧室から戻ったときに、タカシがスマホ画面を覗き込みながら口の形を“イーッ”として、歯をチェックしていた瞬間を見てしまったことを。
少し滑稽だと思ったものの気に留めないようにしていたが、今になって複雑な感情が湧いてきた。
―もしかしたら、とんでもないナルシスト男…?
そう思いだすと、タクシーの中にも関わらずぞくぞくと悪寒が走った。
◆
翌週のランチタイム、早速理奈に報告すると、理奈は、やれやれ、と言わんばかりに溜息をつく。
「出たわね。残念極まる、自撮り男。ちなみにそういうナルシスト男って、一緒に街を歩いていても、鏡になるものはなんでも鏡にして、自分の姿をチェックしたりするのよね」
そして理奈は、真顔でこう言うのだった。
「でもそういう男ってね、実は決定的なコンプレックスがあったりするのよ。思い当たる節、ない?」
理奈は35歳なだけあり、さすがに経験が豊富だ。瑠璃子はデート中の彼の話を、ふと思い出した。
「そう言えば、両親ともにお医者さん一家で生まれて、上2人の兄弟と比べて自分は落ちこぼれだって言ってたわ」
タカシは、3人兄弟の末っ子。上2人の兄弟は東大の医学部出身で、かなり優秀だと言っていた。今は権威ある大学病院で、かなり腕のいい外科医として活躍しているらしい。
一方、タカシだけは何とかねじ込められる形で私立の医大に入り、美容外科医になったと自虐気味に語っていた。
基本的にはあっけらかんとしているタカシが、たしかにその話をしていたときは、妙に神妙な面持ちで話していたのを思い出す。他の2人と比べると、医者としての“腕”だけでは勝負できないらしい。
そしてだからこそ、実力だけではなく「外見の良さ」を含めた“総合力”で、同じ土俵に立とうとしているのだろう。
「これ以外は、完璧なのに…!」
瑠璃子はそう嘆きながら、いま一度タカシのInstagramを見た。大好きな西島さん似の顔だが、ナルシスト感たっぷりの自撮り写真が続くと、なんだかもうお腹がいっぱいになる。
嘆く瑠璃子を見かねた理奈が、諭すように言った。
「でもね、瑠璃子。彼はそれ以外完璧なんでしょ?誰にだって欠点はあるんだから、どこかで目をつむらないと…」
その言葉に一理あるのは、瑠璃子だって充分、分かっている。でも、この超ナルシストっぷりは、どうしても受け入れられそうになかった。それは理屈ではなく、本能なのだ。
―私は、これから出会う男たちのどんな「残念な点」だったら受け入れられるのだろうか?
瑠璃子、29歳。これからの長い道のりを思い、大きく息を吐いた。
▶Next:1月17日水曜更新予定
あなた何様ですか?女を見下す、残念極まる男。
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
と思いながら読んでました。
本能的に無理なのに多いに共感!笑
会話が一人称なんですよねー。
素適なお店でご飯&医者繋がりの友達紹介してくれる要員には最高!笑
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