2018.01.10
残念極まる男 Vol.1タカシが予約をしてくれた店は、神楽坂の鉄板懐石料理店『いわ倉』。お店のチョイスから、これまでにデートをしていた同世代の男性とは違う、大人の男のセンスを感じる。
ライブ感を楽しめるカウンター席で食事を楽しみながら、瑠璃子は、彼との距離が自然と縮まっていくような気がした。
ただ、さっきからタカシが瑠璃子の顔をじっと穴があくほど見つめているのが、気にかかる。
「あの…もしかして私の顔に、何かついてますか?」
瑠璃子がドキドキしながら尋ねると、タカシは我に返って、笑いながら答えた。
「あっ、ごめんね。思わず見とれちゃって。こういう仕事をしているとつい気になってしまうんだけど、瑠璃子ちゃんの肌って本当に綺麗だよね」
普通の男性に言わせたら歯の浮くようなセリフも、美容外科医に言われるとなんだかすんなり受け入れてしまう。
こうして次第に心を許していった瑠璃子は、タカシとの会話に夢中になった。仕事や家族の話など当たり障りのない話題も、ユーモアを交えながら面白可笑しく話してくれるので、瑠璃子は終始彼の話に聞き入ってしまった。
化粧室へと席を外して、リップを直しながら、幸せな瞬間を噛みしめる。でも、同時に不安に襲われた。
—タカシさん、35歳って言っていたっけ。こんなにパーフェクトで独身なんて、奇跡じゃないかしら…?すごくモテそうなのに。
美容外科医という肩書きに、西島秀俊似の恵まれたルックス。これほど完璧なのに35歳まで独身なのは、仕事が忙しいから?それとも、結婚願望がないのだろうか?
あれこれと考えてみたが、さっぱりわからない。考えすぎかな、と小さく呟いて瑠璃子は席に戻る。その後もタカシは最後までトークを炸裂させ、瑠璃子も笑いっぱなしのまま、初めてのデートは無事に幕を閉じた。
「楽しかったね!良かったら、またすぐ会おうよ」
「はい、是非!今日は本当にありがとうございました」
デートの帰り道、瑠璃子は上機嫌のままタクシーの中でスマホをバッグから取り出す。
—そういえば、タカシさんインスタやってるって言ってたっけ。
瑠璃子はワクワクしながら、タカシのInstagramアカウントを眺めることにした。
一方のタカシは、瑠璃子をどう思っていたのか?
タカシは、瑠璃子と初めて出会った日の夜、確かな手応えを感じていた。オークドアで、バーにいる女たちをさりげなく物色しているとき、一瞬、瑠璃子と目があった気がしたのだ。
—あの子、俺を見ているな…。
彼女はきょろきょろと周りを見回すふりをしているようだが、さっきからなんだか視線を感じる。タカシを意識しているのではないだろうか。
友人に耳打ちし、二人の女に声をかけることにした。タカシの狙いはもちろん瑠璃子で、一目彼女を見たときから気に入っていたのだ。
仕事柄、女性の顔の造りにはつい目がいってしまう。瑠璃子の左右対称の整った顔立ち、合格である。
女性が喜びそうな「医者あるある」トークを散々繰り広げ、楽しそうに話を聞いている瑠璃子を見ているうちに、何としてでも食事に誘いたいと思った。
そこでタカシは彼女の連絡先を聞き出し、二人きりで会う約束を取り付けたのだった。
この記事で紹介したお店
鉄板焼き いわ倉
と思いながら読んでました。
本能的に無理なのに多いに共感!笑
会話が一人称なんですよねー。
素適なお店でご飯&医者繋がりの友達紹介してくれる要員には最高!笑
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