お食事会の星☆:商社マンより商社事情に詳しいマテリアルガールに、翻弄された2人の男
-付き合い始めたんだね、おめでとう。-
-ちなみに瑛士は、俺たちのこと知らないよね?-
鉄平が続けて2通のLINEを送ると、礼実はすぐにそれを見たようで既読になった。そのまま返事を待っていると、
-鉄平くん、今少し話せる?-
と返ってきた。すぐに「大丈夫だよ」と送ると、着信を知らせる画面に切り替わった。
「ごめんねー、驚いたよね」
礼実の声はあっけらかんと明るい。
「あの日ね、私随分酔ってたみたいで記憶がほとんどないの。でも、泊まったことは内緒にしといてね」
「ああ、うん。そうだね。…礼実ちゃんって瑛士のこと狙ってたの?」
聞いていいのかわからなかったが、鉄平は聞かずにいられなかった。
本当は瑛士を狙っていたのか。だとしたらあの日どうして家に付いてきたのか。逆にもし最初は自分を狙っていたのなら、どうして瑛士に乗り換えたのか。考えれば考えるほど、礼実が何を考えているのかわからなくなる。
礼実からどんな答えが返ってくるのかと構えていたが、彼女の返事ははっきりしない。
「うん、まあ色々あってね」
そんな風に濁されて終わった。電話を切っても釈然としない思いが広がる。
ただひとつ間違いないのは、礼実がとんでもない女だということだ。
1つの食事会で1人ルール。鉄平のまわりの男たちは、この暗黙のルールを忠実に守っている。普通の女性であればやはり、このルールを守るはずだ。
得体の知れない礼実という女について、瑛士に一言忠告した方が良いのか、鉄平は頭を悩ませるが、その答えはなかなかでてこない。
「ジムでも行くか…」
思い切り汗をかいて、自分を痛めつけたい。なんとなく、そんな気分だった。